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いつも、どこかですれ違う人がいる。
初めは気にも留めていなかったが、あまりに色々なところですれ違うものだから、次第に気になるようになってしまった。



あ、あの人だ。すれ違う瞬間、思わず目で追う。
今日はなんだか、雰囲気が違う。
表情が暗い。

何があったんだろう。
話しかけようか。
けれど、相手にとっては見ず知らずの人間であるはずの自分が、いきなり話しかけに行ってもいいものだろうか。
そうして迷っている間にも、その人はとぼとぼと歩いていく。

やっぱり、心配だ。
気づけば呼び止めていた。それも少々気色の悪い言葉で。


「あのっ、自分、いつもすれ違ってる者なんですが…」


しまった、と思ったときには遅く。
しかし相手は、その疲れた顔に精一杯の微笑みを浮かべて、
「はい、知ってますよ。何かご用でしょうか?」
と答えてくれた。
嬉しさと心配が混じって、その日はお互いの気が済むまで話をして別れた。


その後、互いが特別な存在になるなんて、その時の自分は考えもしなかった。


【すれ違い】

10/19/2024, 1:56:20 PM