次に目が覚めるまでに、
この世の全てが終わっていたらどうしよう。
まあいいや。
君がいるなら。
【目が覚めるまでに】
瀕死だと告げられた、自分の大事な人が、奇跡の生還をして、病室で一番に自分の名前を呼んでくれた日。
どうしようもなく嬉しくて、愛しくて。
あの日自分は、生まれて初めて、身体中の水分がなくなるほどに涙を流し続けた。
【病室】
これ以上、大切な存在を喪うのが嫌なんだ。
だから、一人でいたい。
──俺は、消えないよ。
──だから、側にいさせて。
聞こえないはずの声が、聞こえた。
消えない、と決意のこもったように言っておきながら、結局自分より先に逝きやがったアイツの声が。
結局自分は、一人じゃ生きられないのか。
それなのにまた、一人になった。
いっそ、後を追おうかな。
あーダメだ、そんなの、アイツは喜ばない。
…惨めだ、すごく。
こんなところ見られたくないから、今だけは、
独りでいたい。
【だから、一人でいたい。】
ある人と出会った。
その人は、世界で一番、綺麗で、儚げで、澄んだ瞳をしていた。
自分はどうしようもなく惹かれて、
その瞳を、ずっと自分だけに向けていてほしくて、
それを伝えようとして口をついて出た言葉が、
「あなたの瞳が欲しい」
だった。
そのあと気まずい雰囲気になって必死に弁明しようとしたら、それが全部どストレートな告白になってしまったのは言うまでもない。
【澄んだ瞳】
布団に寝転がってスマホをいじっていたら、昨日の夏祭りのことを、ふと思い出した。
慣れない浴衣を着て、脱げそうな草履の鼻緒を足の指で必死に引き止めながら、二人、境内の屋台を巡っていた。
お互い、好き勝手に目についた屋台に行って、約束した時間じゃないのに気づいたら合流してたりして。会うたびに大笑いした。
祭りのメインディッシュの打ち上げ花火。
始まる前に穴場に行くのは間に合わなかったので、仕方なく境内の隅っこで花火を眺めた。
綺麗だったな。
花火、もそうだけど、花火を眺めるアイツの横顔が。
一つ思い出すと、走馬灯のように色々よみがえってくる。
かき氷の溶けた残りを飲みほす、アイツの喉仏。
熱々のたこ焼きに息を吹き掛ける、アイツの唇。
生ぬるい風になびく、アイツの髪。
屋台の光を反射して煌めく、アイツの瞳。
屋台巡りの後、意図せず合流するたびに、たまらず吹き出した、あの顔。
視線をおろせば、いつもより露出した手足の首。
全部全部全部、綺麗だった。
ここまで思い出せるのはもう、変態かもしれない。
その全部を、自分は絶対に手に入れられないと分かっているくせに。
…初めから終わっていた恋心を急に自覚してしまって、勝手に涙が出てきた。
【お祭り】