布団に寝転がってスマホをいじっていたら、昨日の夏祭りのことを、ふと思い出した。
慣れない浴衣を着て、脱げそうな草履の鼻緒を足の指で必死に引き止めながら、二人、境内の屋台を巡っていた。
お互い、好き勝手に目についた屋台に行って、約束した時間じゃないのに気づいたら合流してたりして。会うたびに大笑いした。
祭りのメインディッシュの打ち上げ花火。
始まる前に穴場に行くのは間に合わなかったので、仕方なく境内の隅っこで花火を眺めた。
綺麗だったな。
花火、もそうだけど、花火を眺めるアイツの横顔が。
一つ思い出すと、走馬灯のように色々よみがえってくる。
かき氷の溶けた残りを飲みほす、アイツの喉仏。
熱々のたこ焼きに息を吹き掛ける、アイツの唇。
生ぬるい風になびく、アイツの髪。
屋台の光を反射して煌めく、アイツの瞳。
屋台巡りの後、意図せず合流するたびに、たまらず吹き出した、あの顔。
視線をおろせば、いつもより露出した手足の首。
全部全部全部、綺麗だった。
ここまで思い出せるのはもう、変態かもしれない。
その全部を、自分は絶対に手に入れられないと分かっているくせに。
…初めから終わっていた恋心を急に自覚してしまって、勝手に涙が出てきた。
【お祭り】
7/28/2024, 2:27:21 PM