真相は、神のみぞ知る。
だったら教えてくれよ、神様。
ホントはアイツ死んでないんだろ?
これは、別人の骨なんだろ?
嘘なんかつくなよ、神なんだから。
アイツはちゃんと生きて、今もどこかにいるんだろ?死ぬなんてあり得ないよな?
なあちゃんと教えてくれよ、なあ、…
神は答えなかった。
故人の魂が、骨壺を前に涙を流す男のそばに寄り添い続けていることを知っていてもなお、神は口を開かなかった。
中途半端な希望を与えるよりも、現実を受け入れさせることが最大の慈悲だと、神は信じていた。
【神様だけが知っている】
この道の先に、大きな荷物を持ったおばあさんがおろおろしている。
あそこの角を曲がれば、引ったくりに遇った男性と出会う。
今来た道を戻れば、風船が高いところに引っ掛かって泣いている子供に助けを求められる。
へえ、この「自分の周りの困っている人が視える」って能力、便利。
人助けし放題じゃん。
※語り手は純粋な善意によりこの能力を使用して
います。
【この道の先に】
帰り道。
夕方の、赤い日差しを受けたアイツの横顔が、どうしようもなく好きだった。
【日差し】
「………」
「……………」
自宅の窓からこちらを覗いている女性と目があった。
「あ、どうも~」
とでも言うように控えめに手を振っている。
薄気味悪さを覚えながら窓に近づく。
するとその女性は、へらへらとした笑顔を浮かべながら捲し立てた。
「あ、!あの~私レイコといいまして~ずっとあなたのこと見てたんですよ!かっこいいなーって!あの、それでなんですけど、えへへ、私と付き合ってくれませんか?」
窓は締め切っているはずなのに耳に響く声量で、くねくねと動きながら、勝手に話し続ける女性。
「…あの、それよりも」
「はい?」
「ここ四階ですけど…どうやってここまで来たんですか?ベランダもないのに」
「え?浮いて来ましたよ?幽霊なので」
「……うわ」
「で、付き合ってくれるんですか?」
「幽霊はちょっと…」
「分かりました!人間ならいいんですね!!」
「そういうことじゃ…」
数週間後、その女性は人間の姿になって、今度はちゃんと玄関からやってきた。
告白はもちろんお断りした。なぜか友達にはなったが。
【窓越しに見えるのは】
入道雲のようにわきあがってくる想い。
あの子の為にも早く忘れてあげたくて、こんな自分が憎くて、一晩中、布団に雨を降らせた。
でもなんで…?
雲は雨を降らせたら消えるはずなのに。
どうして私の雲は消えてくれないの?
【入道雲】