じりじりと肌を焼く暑さにバテる夏。
水泳の授業を数回でリタイアして、傍観者に成り変わる夏。
制汗剤と日焼け止めのにおいが教室内に充満する夏。
外と中の寒暖差で毎年誰かが風邪を引く夏。
毎日のようにコンビニで買ったアイスをかじりながら帰る夏。
イベントでカップルが成立して周りが無駄に盛り上がる夏。
早々に課題を放棄してスイカを食べて涼む夏。
どこを探しても、もう君はいなかった。
【夏】
ここではないどこかへ逃げていたら、
今頃、永遠に二人でいられたはずなのに。
なあ、
俺は、どうすればいい?
お前がいなくなったこの世界で、
どうやって生きればいいっていうんだよ。
【ここではないどこか】
いつものように学校に行って、いつものように静かに座っている君にちょっかいをかける。
君はうざがりながらもいつものように付き合ってくれて、いつものように笑いあった。
休み時間はいつものように他愛もない話をして、
次の時間割りにはいつものようにうんざりして、
昼休みはいつものように二人っきりで屋上で食べて、
掃除の時にはいつものように先生にばれないようにふざけあって、
帰りにはいつものように肩を並べて帰る。
分かれ道で、いつものように名残惜しさを残しながら、誰よりも長いバイバイをする。
そうして、姿が見えなくなった頃に、やっと家路についた。
次の日から、君は来ることはなかった。
【君と最後に会った日】
彼は私に触れる直前、いつも微かに指が震えます。
そうしてためらいがちに、そっと、そっと触れるのです。
私が壊れることが怖いのでしょうか。彼は私のことをまるで硝子細工の花のように扱います。
壊れる心配なんてないのに。
「私」はとうに壊れているのですから。
けれどなんだか、その行為によって「私」が修復されているような感じがして、それに甘えてしまうのです。
心を失くした人間と、彼女を愛する人間のお話。
【繊細な花】
今日は一年で一番素晴らしい日。
ケーキを切って、蝋燭の火を消して。
今日までの1年を生きたことをお祝いするのです。
パーティーが終わって、部屋が静かになって、一人分の呼吸だけが耳に響いて。
時計が明日を告げたころ。
1年後もお互いの心臓が生きていることを願って。
私は彼の少し長い髪の毛を撫でたのでした。
【1年後】
アメリカ民謡研究会風の文章が書きたくて。