「これからも、ずっと、一緒に生きていきたい」
そう言うには、ぼくたちの関係は遠すぎて。
でも、この想いを断ち切ることができないほどには、ぼくたちの関係は近すぎた。
お互いに唯一の親友。
いつも一緒にいるし、お互いの隣は譲れない。
けど、それはあくまで友達としての態度で。
慕ってるのは、ぼくだけ。
見てれば分かる。
苦しいな。
【これからも、ずっと】
赤い陽が、沈んでいく。
ゆっくり、ゆっくり。
僕の足は、早くなる。
どんどん、どんどん。
足が早くなると、気持ちが焦る。気持ちが焦ると、足はまた早くなる。
あの太陽のように、ゆっくり、のんびり生きたい。そう思う隙すらない現代。
でも宇宙規模で見たら、太陽も毎日重労働してるから、もしかしたら現代が宇宙に追い付いてきたのかも。
嫌だなあ、そうだとしたら。
そんな答えのないことを考えながらもせかせかと動き続ける僕の足。
この陽が沈みきる前に、家に帰らないと。
【沈む夕日】
それでいい。
と、妥協して生きてきた。
だって、それ「が」いいと言えるほど強く求めたものがなかったから。
でも、あなただけは、妥協できない。
「側にいられれば、それでいい」なんてことも言えなくなるほど、惹かれてしまったから。
この先の長い年月を共にするなら、あなた「が」いいわ。
【それでいい】
「『大嫌い』」
「ありがとう」
「なんで」
「エイプリルフール」
「ぐっ…!!バレてたか」
「世界中が知ってるわエイプリルフールなんて」
「だよな」
「うん」
「じゃあ今のはこの一大イベントでついた嘘ってことで」
「ドヤんな。…あでも、今午後だから嘘にならんくね?」
「え、そのルール迷信じゃないの?」
「実際あるみたいだぜ」
「…」
「で?ホントに大嫌いなの?別れる?」
「嫌いじゃないです大好きです愛してます別れません絶対」
「よろしい」
「…あ、それも嘘だったり」
「嘘じゃねえよっっ!!!!!!!!」
今日も今日とて繰り広げる、恋人とのくだらない会話。
【エイプリルフール】
私にとっての『幸せ』だった人は、一番幸せそうな顔をして死んだ。
なんでも、ずっと前に同じ病気で死んだ母親に会いにいけるから、幸せなんだと。
あんなに順調に快復していたのに。容態の急変は、あの人が望んだことだったんだろうか。
死ぬことが、あの人の幸せだった。
あの人が生きていることが、私の幸せだった。
やっぱり、自分と誰かの幸せを同時に叶えることは、できないのかな。
『幸せ』が壊れた私は、せめてあの人の幸せが叶うように、「お幸せに」と棺に呟いた。
【幸せに】