私にとっての『幸せ』だった人は、一番幸せそうな顔をして死んだ。
なんでも、ずっと前に同じ病気で死んだ母親に会いにいけるから、幸せなんだと。
あんなに順調に快復していたのに。容態の急変は、あの人が望んだことだったんだろうか。
死ぬことが、あの人の幸せだった。
あの人が生きていることが、私の幸せだった。
やっぱり、自分と誰かの幸せを同時に叶えることは、できないのかな。
『幸せ』が壊れた私は、せめてあの人の幸せが叶うように、「お幸せに」と棺に呟いた。
【幸せに】
3/31/2024, 11:15:20 AM