「ごめんね」
20歳を過ぎた頃、僕は自分の過去の行動を振り返り、後悔することが増えた。
自分の不誠実な振る舞いで傷つけてしまった人たちのことを考える。
連絡が取れ謝罪する機会に恵まれたこともあったが、どうしても連絡先が分からない人もいた。
心の中で何度も謝罪を繰り返す。
たとえ他の人たちが見ていなかったとしても自分の行動は自分が見ている。
悪いことはできないのだ。
いずれ苦しむのは自分自身だからだ。
忘れられない、いつまでも。
妹の結婚式でうんこを漏らした。
30歳の冬だった。
忘れられない、いつまでも。
怖がり
妻と交際を始めたての頃、遊園地デートで、有名なお化け屋敷に行ったことがある。
彼女が行きたいと言ったお化け屋敷。怖がりな僕は何とか行くの回避しようとしたが、妻の期待のこもった眼差しを前にすると拒否することは難しかった。
襲いくる恐怖の仕掛けの数々に、僕は逃げ出したい気持ちを抑えていた。
妻のいる手前、醜態を晒したくなかった。
なんとか痴態を見せずに脱出できたと思ったが、彼女には全てバレていた。
妻と握っていた手に力を込めていたり、警戒をしてあちらこちらを見て挙動不審になってしまった反応で分かったようだ。
彼女には今もそのお化け屋敷のことを可愛かったとからかわれる。
豪胆な妻に尻に敷かれる関係はこの時に始まったとも言える。
星が溢れる
壁にぶつかり悩んでいるとき、夜空を見るのが好きだった。
溢れる星を眺めながらこの星の光はどのような所から来たのか思いを馳せる。
夜空を眺めた後は決まって星座や 惑星の書籍を読んだ。
壮大なスケールにしばらくの間、悩みを忘れることができた。
悩みができたとき、今も僕は変わらず夜空を眺める。
安らかな瞳
2年前、祖父が天寿を全うした。
とても悲しく寂しかったが、祖父の穏やか表情に幾許かの安堵を得た。祖父は安らかに逝けたと伝わったからだ。
僕の心の中の祖父はいつも優しい眼差しを僕に向けてくれている。
祖父のように優しく穏やかな人でありたいと願っている。