ひとひら…
3歳くらいだったか…
一度だけ、ピアノを習ったことがある。
習った……?
大きなピアノの前の椅子に座った。
先生が隣に座って
彼女は やさしく言った。
「手は、タマゴを持つようなかたちにしなさい」
私は、タマゴを持つ自分を想像した。
そして、一生懸命に その手の形を作った。
「だから、タマゴを持つように!」
先生の声は だんだん大きくなった。
どこが悪いのか全く わからなかった。
ついに私は先生の気に入る形の手を作れなかった。
泣いたか泣かなかったか…
ピアノの記憶はそこで途切れている。
言の葉 ひとひら…
されど ひとひら…
私の手はとても小さかった。
大人がタマゴを持つのと、3歳の子が持つのとは違う。
タマゴを持つ以外の手のかたちを言ってくれていたら
今ごろ私は
ピアニストになっていたかもしれないのになぁ
……ないか。
風景……
この春、私はアリのゲームを卒業した。
卒業なんていうと カッコいいけど
要するに ハマりすぎてやめざるを得なくなった。
目が覚めてすぐにアリの巣の様子を見に行く…
会社のトイレで突然決意した。
用を足しながらアリの巣の様子を見ようとして
…これは いけないと 思った。
その夜、日本人のアリ友達に短い手紙を書き
私は 南米のコロニーを去った。
私が居なくなっても
あの風景は スマホの中に存在する
私のアリの巣も、風景の一部として有ることだろう。
フラワー…
繰り返し読んだ本があった。
その本は、保育園の棚にあった。
やさしいことをすると、花がひとつ咲く
そんな内容の話だった。
卒園の日、園児たちは一冊ずつ本をもらった。
私は、その本がとても好きだったし
その本を貰えると思い込んでいた。
でも、私の番が来て
選べる本の中に、その本は無かった。
それから一度も、あのお気に入りの本を読んでいない。
でも………と思う。
数十年たった今でも、本の内容はよく覚えている。
挿入された切り絵の美しさもそのままに
卒園式のあのとき、
私の花が、花さき山に咲いたのかもしれない。
涙……
♪ダメだもうダメだ涙も拭けない
♪そんな自分変えたくて今日もゆく
明日も の歌詞だ。
何かのテレビで聞いてとても好きな歌になった。
この歌の主人公はとても頑張り屋さんだ。
それから、歌っている人の声がこれまたかわいい。
それはさておき、
泣くことには、ストレス浄化作用があるという。
最近、涙腺ゆるゆるな私だ。
うーん、浄化されている……
春爛漫…
渡された桃色の粒のむ君よ 安楽死って犯罪だよね
私は、幸せすぎると死を考えてしまう。
みんなそうなんだろうか?