ひとひら…
3歳くらいだったか…
一度だけ、ピアノを習ったことがある。
習った……?
大きなピアノの前の椅子に座った。
先生が隣に座って
彼女は やさしく言った。
「手は、タマゴを持つようなかたちにしなさい」
私は、タマゴを持つ自分を想像した。
そして、一生懸命に その手の形を作った。
「だから、タマゴを持つように!」
先生の声は だんだん大きくなった。
どこが悪いのか全く わからなかった。
ついに私は先生の気に入る形の手を作れなかった。
泣いたか泣かなかったか…
ピアノの記憶はそこで途切れている。
言の葉 ひとひら…
されど ひとひら…
私の手はとても小さかった。
大人がタマゴを持つのと、3歳の子が持つのとは違う。
タマゴを持つ以外の手のかたちを言ってくれていたら
今ごろ私は
ピアニストになっていたかもしれないのになぁ
……ないか。
4/13/2025, 2:42:56 PM