ところにより雨。
私の雨は止むことは無い。
いつまで振り続けるのだろう。
もう疲れた…。
だらりと傘を持っていた腕を下げる。
じっとりとした空気。それに混じる匂い。お構いなしに雨は私に落ちる。
疲れた、疲れた。
バカみたい。
今度こそ、今度こそはと思ってた。
なのに今回も駄目だった。
勝負の世界は舞台の上での結果のみが評価される。
この舞台のために、何日、何ヶ月費やしただろう。
ぐらりと足元が歪むような感覚を覚える。
バカみたいだ。
一瞬で決まってしまうことのために今まで努力して、それを結果に繋げられなくて。
今まで何回失敗してきただろう。
バカだ、馬鹿だ、自分なんて。
ああ、悔しい。
拳をギュッと固め、感情が今にも爆発しそうだった。
でも、それでも。
目の前の優勝者の晴れやかな姿を見て思うのだ。
まだ、まだ終わりやしない。
いつかそこに昇ってやる。
この悔しさを無駄になんてするもんか。今日のおさらいと、反省をしないと。
敗者はその場から抜け出した。
努めて誰にも会わないように、この昂りを悟らせないように。
ここにまた一人強者が生み出される。
*
夢が醒める前に。
そんな事を言ったって時間は確実に過ぎていく。
そして気づく、もう戻ることはできず、進むしかないという事を。
この先はどうすればいい?
嫌だ、考えたくない。
止めろ、止めろ止めろ止めろ止めろ!
そう願うのにタイムリミットは目前だった。
覚悟も決まらず、何もわからず、ただ愚かにステージに立たされる。
不条理。
追い詰められた狐はジャッカルよりも凶暴だ。
何処かで聞いたような言葉が頭によぎる。
既に虫の息だと思っていたものは懐に忍ばせておいた銃で次々とこちら側の手勢を潰している。
ただ生き残るために。
鋭い動きで相手に近づき急所に一撃を与えていく。腕に、顔に、傷が付けられようとも歩みを止めず、後ろには倒れ伏した人の山になっていた。
どこにそんな力が。
確かに決定的な傷を負わせたはずなのに。
気が付けば目前まで近づかれていた。
異様な空気を持った悪鬼のようなものが、目を爛々とさせてこちらを睨んでいる。
ああ、なんだ。
こちらがハンデを負わしただけなのか。
「こんなの不条理だ」
そう呟いた私の意識はそこで途切れた。
泣かないよ
「卒業式ってさぁ、泣く?」
先輩たちの卒業式を終えて、部室で散らばったものを片付けようと腰を上げたところで一人が声を上げた。
「なにそれ」
おセンチかぁ?と揶揄い混じりに隣に座っていた人物に小突かれた発言者は、だってさぁ、と立ち上がりながら言った。
「卒業しちゃったらさ!もういつもみたいに会えないんだよ?そんなのさぁ、なんか、寂しいじゃん」
おっ、嬉しいことを言ってくれる。
私はちょっと感心してしまった。
もちろんそういった友との日々を憂いや感謝を込めて泣いてしまうということはあるだろうが、自分の友人もそう思ってくれていたのか、と。
隣の人物に小突かれすぎて少しむすりとしてしまった友人は危惧しているのだ。
自分たちもあと一年もしたら卒業する事になる。
そうなった時に、今の関係が壊れてしまうのが怖いのだ。
揶揄いすぎたか、と困り顔のもう一人の友人と目が合う。
私は友人に目配せして不機嫌顔の友人を二人で取り囲み、両隣からサンドするように軽いタックルを喰らわせた。
「うわぁ!なになになに⁈」
一気にびっくり顔になった友人を見て仕掛け人側の私は諭すように、もう一人の友人は呆れたように言った。
「俺は泣かないかな。だって泣く理由が無い」
「私も泣かないねー。大体想像してご覧よ?ウチらゼーったい卒業しようが、おじおばになろうがサイゼに入り浸るでしょーが」
だから卒業したっていっしょだよ!
2人の声が思わず重なり、感心してたらもう一人の友人は泣き出してしまった。
あらら、結局泣いちゃった。
***
やっぱりこのシーズンなので…。
本当にあの時に友人になってくれた人たちを大切にしていきたい。