「言い出せなかった「」」
『ある想い①』
「貴方が必要なの」
「行かないで」
「別れたくない」
「好きなの」
飲み込んだ沢山の言葉が、いつまでも私を苦しめる。
どうして素直になれなかったのだろう?
どうして意地を張ってしまったのだろう?
後悔の海に溺れる私は、自分が言い出せなかった想いのせいで最後の一歩を踏み出せず、ずっとここに留まり続けている。
いつか忘れられるのだろうか?
いつか笑い話に出来るのだろうか?
そんな日が来る事を信じて、動き出せる日が来るまで、私はこの場にうずくまり続ける。
『ある想い②』
もううんざりだ。
もう、一秒たりとも一緒になんて居たくない。
顔も見たくないし、同じ空気を吸うことすら耐えられない。
私、よくここまで耐えたよね?
よくここまでキレずに居たよね?
ホントに自分の我慢強さを褒めてやりたい。
……いやいや、待って。
褒めたら駄目じゃん。
よく考えたら、こんだけ我慢したからアイツがつけあがったんだよ?
そこまでになる前に何とかするべきだったんだよ。
もっと早く言えばよかった。
なかなか言い出せなかったけど。
「別れよう」
「私の前から消えて」
「マジもう無理」
……そして、本当は一番言いたかったのに、言えなかった事。
「この、ドクズがっ!!悔い改めろや!!」
「頼むから一生不幸で居てくれ」
「2度と私の人生に関わるな!!」
ああ、神様。
こんな酷い暴言を吐く私を許してください。
でも、コレが私の、真実の心の声なんです……
『ある想い③』
いつも人に気を遣いすぎて、疲れる。
相手に気を遣ったつもりの言葉でも、相手にしたら嫌な時もあるかな?とか。
同じ言葉でも、受け止め方によって随分変わるから、そもそも余計な事は言わない事がベストなのかな?とか。
いつも考えすぎて言葉を飲み込んで。
そして、結局は何言えないまま終わってしまう。
自分は人に少し優しい言葉をかけられたり、少し優しくされるだけでその日はハッピーになれるのに、人にそうできなくて、もどかしい。
ホントは優しく言葉やプラスの言葉はどんどん口にすればいいのに、考え過ぎて空回ってしまう。
ちゃんと、言いたい。
人に、優しさを、温もりを伝えられる人になりたい。
でも、今日も言い出せなかった「」を悔やみ続ける。
「secret love」
貴方へのこの想いは、誰にも知られてはならない。
心に秘めた、この想い。
出逢うのが遅かった、とか。
彼女が居る事を知らなかった、とか。
色々言い訳が次々と浮かぶけど。
でも、やっぱりそれは言い訳でしかなくて。
私のこの想いは報われる事はない。
表に出ても、貴方も彼女も嫌な思いをするだけで、誰の為にもならない想い。
だから、誰にも知られるわけには行かない。
誰にも知られない様にしなければならない。
いっその事、この気持ち自体がなくなってしまえば、こんな思いをしなくてもいいのに、とも思う。
でも、私の中にある、この気持ちに。
私だけは、嘘をつきたくない。
誰にも言えないけど、なかった事にはしたくないから。
大切な、私の気持ちだから。
「ページをめくる」
読みかけの本のページをめくる。
この話の次はどうなってるの?
ストーリーが面白いと、途中で止める事が出来なくなって、翌日の寝不足覚悟で一気に読んでしまう。
でも、読み終わっちゃうのが惜しい気もして、楽しみを次の日に取っておこうか、とも思う。
早く読みたい気持ちと、読むのが勿体ない気持が拮抗して、自分の中で戦ってる。
本って凄いな、って思う。
学術書とかは別として、一般的な小説とかエッセイだと、楽しめる時間から考えると凄く安価で、しかも何度か読み返す事で違う解釈が出来たりする事もあって。
非常にコスパに優れてると思う。
しかも、ちょっとした雑学や知識も身につけられる。
本に書かれた一言が人生の指針になったり、力づけられる事もある。
その一言に、救われる事もある。
最近では電子書籍も増えたけど、やっぱり私は昔ながらの紙の本が好き。
画面をスライドする流れるような動きでは得られない、ページをめくる時のあの少しもどかしい感じが好き。
でも、段々と年をとって、紙やビニールがめくりづらくなってきた現実があるから、それを感じた時はちょっと悲しい……
「夏の忘れ物を探しに」
夏の忘れ物。
花火に行けなかった。
プールにも行けなかった。
キャンプも、海も行ってない。
でも、一番の忘れ物は。
君に「好きだ」と言えなかった事。
卒業までには言えるのだろうか?
探しても見つからないし、むしろ探さなくても僕の中にある、大きな大きな忘れ物。
「君が、大好き」の一言を。
「8月31日、午後5時」
今日の事は思い出せる。
でも、よっぽど記憶に残る出来事がない限り、1年前のこの時間に何をしていたか?と問われても答えられない。
カレンダーを見る、とか、手帳や日記を書いている人ならそれを見る、とか、何かヒントがあればまだ思い出せる可能性はあるけど、ただ漠然と聞かれてもほぼ思い出せない。
代わり映えの無い、平凡な毎日。
でも、本当はそれがかけがえのないもの大切な時間の積み重ねだと気づくのは、いつも決まって失ってから。
平凡で、代わり映えせず、刺激のない、昨日と同じ今日。
でもそれは、平和で、諍いがなく、悪い変化のない、昨日より悪くなっていない今日。
時間に追われ、ただ毎日を消費する様に過ごしてしまいがちだけど、その一瞬一瞬が、かけがえのない大切な時間だと言う事を、時々でいいから思い出して、愛おしんで生きていきたいと思う。