「マグカップ」
今日私はこの部屋を出て行く。
貴方と過ごした日々も、貴方との想い出も、全てを置いて出て行く。
好きだったよ?
幸せだったよ?
でも、私は自分の夢を諦められない。
愛があれば距離なんて、とか。
愛さえあれば乗り越えれる、とか。
口にする事は簡単だけど、実際に自分は我慢出来るとしても、相手にそれを強いる自分では居たくない。
貴方と夢を秤にかけて夢を選んだ時点で、私は貴方に何もしてあげられない事が分かって、貴方に何も言えなくなった。
きっと、今までの恋で一番だった。
初めて、愛って、もしかしてこんなの?って思えた。
でも。
私は夢を選んで、この家を、この街を、出て行く。
後悔もしないし、ホントは未練なんて何一つ残したくないけど。
でも、この貴方とお揃いのマグカップだけは。
ひっそりと置いていくね。
捨ててもいい。
でも、取っておいてくれて、一瞬でいい。
これを見て私を思い出してくれたなら。
きっと私は後悔の海に沈み込むだろう。
でも、それでも。
勝手だけど、貴方に覚えていて欲しいの。
勝手な私でゴメンナサイ。
狡い私でゴメンナサイ。
立つ鳥跡を濁してゴメンナサイ。
貴方を傷つけてゴメンナサイ。
こんなに気持ちを残したまま、旅立ってゴメンナサイ。
でも、行くの。
なかなか最初の一歩が出ないけど、でも、行くの。
さようなら。
有難う。
大好き。
ゴメンナサイ。
「もしも君が」
もしも君が居なくなったら、なんてふと考えて、怖くなる。
若い頃の私は割と荒れた生活をしていて、自暴自棄になっていた部分もあったから、正直「怖い物」ってなかった。
いつ死んでもいい、って刹那的な生き方をしていたし、心残りになる程執着する物もなかった。
それが君が生まれてから、自分よりも大切に思える存在が出来て。
初めて失う事を怖いと思った。
世の中の人って、皆こんな怖い思いを抱えて生きてるんだ、って思ったら、それまで自分が強さだと思っていた物が、ホントにちっぽけで、馬鹿らしく思えて。
自分の馬鹿さ加減に、世間知らずさに、もう笑うしかない程だった。
そして、今でも時々考える。
「もしも君が」
生まれなかったら、私の人生は間違えたまま違う方向に突き進み、何処かで馬鹿な死に方をしていたと思う。
それが、君が生まれてきてくれた事で、こんなにも怖い事を知り、失う痛みを想像してやり場のない不安を感じて。
そして、生きがいを、生きる理由を感じる事が出来た。
「もしも君が」
ずっと幸せで居てくれて、君の人生の最期の時にも、「私幸せだったよ」って言える人生を歩んでくれたなら。
そんなに嬉しい事はないと思う。
苦労してもいい、傷ついてもいい、悩んでもいい。
最終的に君自信が幸せと思える、納得出来る人生を歩んでくれるなら。
それだけが私の今の望みで、きっと、何よりも私の幸せだと思う。
心より願う。
君に、幸あれ。
「君だけのメロディ」
ちょっとした一人言や、失敗した時に出る「ヤバっ」て声すらも、君の口から奏でられれば、一つのメロディーになる。
ちょっとした仕草や、ふとした時に見せる表情も、全てが絵になり、舞台のワンシーンを観てる気になる。
それは多分、僕が君を堪らなく好きだからだと思うんだけと……照れくさいから、君には言わないておこう。
「I love」
love の後に続く言葉は何だろう?
人?動物?物?場所?仕事?趣味?
何であれ、好きな人や物がある事は素晴らしいと思う。
私も、娘とか、動物とか、趣味とか。
loveの後に続く言葉が幾つも浮かんだから、まずまず幸せだと思う。
そして、その幸せを与えてくれた人や物に感謝している。
いつも、有難う。愛してるよ。
「雨音に包まれて」
晴れの休日は、家事に追われる。
洗濯して、掃除して、余裕があれば洗車もして。
でも、雨の日は、洗濯はさすがにサボれないけど、その他は「次の日でいっか」ってなる。
そして、浮いた時間を後回しにしていたタスクに費やす。
大概はそれで1日が終わるんだけど。
でも、梅雨時期は。
雨の日が多いから、なんだかんだで溜めてたタスクも終わり、そうなると後はホントの自由時間。
ゆっくりとコーヒーを飲みながら、なかなか読めなかった長編小説に取り組んだり、ビーズやレジンのアクセサリーを作ったり。
外に出られない分、家でじっくりと過ごせる。
日頃は鬱陶しいと思う雨も、恵みの雨に感じて、優しい雨音に包まれながら、有意義な時間を過ごす。
それが、私の梅雨の楽しみ。