「マグカップ」
今日私はこの部屋を出て行く。
貴方と過ごした日々も、貴方との想い出も、全てを置いて出て行く。
好きだったよ?
幸せだったよ?
でも、私は自分の夢を諦められない。
愛があれば距離なんて、とか。
愛さえあれば乗り越えれる、とか。
口にする事は簡単だけど、実際に自分は我慢出来るとしても、相手にそれを強いる自分では居たくない。
貴方と夢を秤にかけて夢を選んだ時点で、私は貴方に何もしてあげられない事が分かって、貴方に何も言えなくなった。
きっと、今までの恋で一番だった。
初めて、愛って、もしかしてこんなの?って思えた。
でも。
私は夢を選んで、この家を、この街を、出て行く。
後悔もしないし、ホントは未練なんて何一つ残したくないけど。
でも、この貴方とお揃いのマグカップだけは。
ひっそりと置いていくね。
捨ててもいい。
でも、取っておいてくれて、一瞬でいい。
これを見て私を思い出してくれたなら。
きっと私は後悔の海に沈み込むだろう。
でも、それでも。
勝手だけど、貴方に覚えていて欲しいの。
勝手な私でゴメンナサイ。
狡い私でゴメンナサイ。
立つ鳥跡を濁してゴメンナサイ。
貴方を傷つけてゴメンナサイ。
こんなに気持ちを残したまま、旅立ってゴメンナサイ。
でも、行くの。
なかなか最初の一歩が出ないけど、でも、行くの。
さようなら。
有難う。
大好き。
ゴメンナサイ。
6/15/2025, 10:19:58 AM