「手を繋いで」
貴方と初めて手を繋いだ日。
映画館で、貴方の手が少し触れて、その後慌てて引っ込めてたから、触れたくないのかな?って思ったよ。
そしたら、何度かそんな事があって、何度目かには「ぎゆっ」って。
もう私は映画館どころじゃなくて。
貴方はどうなの?と思ってそっと貴方を盗み見たら、貴方は真っ直ぐスクリーンを見てたけど、暗くても分かるくらい耳まで真っ赤だし。
そんな貴方を見たら、何だか私は逆に落ち着いちゃって、そこからはゆっくり映画を楽しんでた。
あれから何年もの時が経って。
今でも貴方とは手を繋いでる。
あの時よりはゴツゴツとして、家族の為に、一生懸命働いてくれてる、手。
そして、もう片方の手には、温かな、強く握ると壊れそうな、ちっちゃな、可愛い手。
紅葉みたいな手と、りんごみたいなほっぺた。
舌足らずに「まま」って呼ぶ声。
ホントに、心の底から幸せだな、って思える。
どっちも私の大切な、存在。
これからも、よろしくね。
「ありがとう、ごめんね」
ごめんね、の類義語の「すいません」は、よく「ありがとう」の意味で使われてる。
人に何かをしてもらった時、人に通路等で避けてもらった時、順番を譲ってもらった時。
いろんな場面で。「ありがとう」の代わりに「すいません」が活躍してる。
でも、私は「すいません」より「ありがとう」の方が好き。
勿論、謝罪の時の「ごめんなさい」や「すみません」は大切だから、謝罪するべき時はそれでいいと思う。
でも、ありがとうって言う時はありがとうで良くない?って思う。
私は、「ありがとう」って魔法の言葉だなって思ってて。
言った方も言われた方も嫌な気持ちにならないし、両方が嬉しい気持ちでいられる。
全ての人に対してプラスの言葉だと思う。
でも、「すいません」は、加害者と被害者、与える人と受け取る人、とか、逆の立場の人が出来ちゃって、必ずしも皆に対してプラスの言葉じゃないと思う。
まぁ、シチュエーションによってはそうでない場合もあって、ありがとうが、「口先だけかいっ!!」って、余計に腹立つ時もあるけど。
でも、基本的には心から出たありがとうは尊いと思ってて。
だから、折角その魔法の言葉を使えるチャンスに、「すいません」って言ってしまうのは、勿体なく感じる。
たかが言葉一つだし、込められた気持ちは一緒なんだけど、でも言霊ってあると思うから、少しでもプラスの言葉を口にした方が、お互いにいいと思う。
私が気にし過ぎで、自分でも理屈っぽいなぁ、とは思うけど。これからも私は「ありがとう」を沢山言って生きていきたい。
「部屋の片隅で」
夏場にたまにある恐怖。
何かが部屋の片隅に、いる。
視界の端っこを、何かが横切る。
ゴキ~?!>.<(TT)
って、もう言葉にならない。
夏場と言えば怪談だけど、幽霊よりもよっぽどアイツが怖い······
「逆さま」
頭から、逆さまになって、落ちて行く。
よく走馬灯のように、って言うけど、ホントにそんな感じで今までの人生が思い出される。
幼かった頃、両親と遊んでいた私。
小学校の運動会、友達との遊び。
中学校の卒業式、初めての彼氏。
受験、大学生活、初めての夜遊び、お酒。
そして、初めて貴方と出逢った日。
結婚式、新婚旅行。
もう、よく自分の頭の中にこれだけの情報が詰まってるな、と思う位、沢山の色んな事が次々に流れてく。
そして、貴方に屋上で押された記憶。
彼女のお腹には、貴方との子供。
貴方は、私より彼女を選んだんだね。
私を押す瞬間も、貴方の瞳の中には全く躊躇も後悔もなかったよね。
最後の、嫌な記憶。
でも、いい記憶も一つ。
落ちる瞬間、貴方の腕を掴んだから。
貴方も今、一緒に落ちてる。
「眠れないほど」
眠れない程に、貴方を想う。
あの時の貴方。あの時の笑顔。
時々見せる照れた顔や、少し困った顔。
貴方の全てが愛おしい。
貴方が好き過ぎて、どうしようもなくて。
自分でもこの気持ちを持て余して、どうすれば良いのかも分からずに。
そして今日も貴方を想って、眠れない。
眠れない程に、貴方を想う。
あの時の貴方。あの時の、彼女を見つめる貴方の笑顔。
時々私に見せる、不審そうな顔や、かなり怒った顔。
貴方の全てが腹立たしかった。
可愛さ余って憎さ百倍。貴方が憎らし過ぎて、怒りが治まらなくて。
この気持ちのやり場がなくて。この怒りをどう処理すれば良いのかわからずに。
そして、今日は貴方の身体を、貴方の脱け殻を片付ける為に、眠れない程、忙しい。