「秋」
秋、と聞くと、何だか淋しげな雰囲気を感じる。
冬に向かって、少しずつ寒くなって。
天気も良くないから、外に出るのも段々億劫になって、人と会う事も減って。
でも、世間では「食欲の秋」とか、「スポーツの秋」とか、割と前向きなイメージで語られてる。
確かに、体育祭とかあるし、食べ物は美味しい。
でも、やっぱり私は淋しさが、付き纏う。
でも、その淋しさは決して不快なものではなくて、ちょっと自分を振り返ってみたり、立ち止まる事で、いつもは見えない景色が見えたり。
それはそれで何だか楽しみだったりもして。
だから、秋は嫌いじゃない。
けど······唯一嫌なのは食べ物が美味しすぎて体重計が怖くなる事かな?
「窓から見える景色」
授業中、窓の外を眺める。
グラウンドで走る貴方。
特別派手でもないし、運動神経がいいわけでもない。
どちらかと言うと、無骨で地味で。
いつから貴方を好きになったんだろう?
忘れ物をした時に助けてくれた時?
転びそうになった時に、手を引っ張って助けてくれた時?
バスの中でおばあちゃんに座席を譲って、その後同じバス停でわざわざ降りて、荷物を持ってあげて遅刻した時?
さり気なく落ちてるゴミを拾ったり、お店のカゴとかカートを片付けてた時?
思い返すと、貴方のいいところばかり浮かんできて、何だか私ばっかり好きみたいで、悔しい。
けど、実際にその通りで、もうどうにもならないくらい貴方が好きで。
決して目立たないけど、よくある「いい人なんだけどね」
で終わるタイプで、いい人だけど色気がなくて、恋愛対象にはなりにくいタイプだけど。
でも、私にとっては最高にカッコよくて。
そんな事を考えながら、又窓の外を眺める。
黙々と走る貴方。
ふと、貴方が、上を見て。目が合って。
少し微笑んでくれた。
少しでも、脈ありなら嬉しいな。
「形の無いもの」
形のあるモノは分かり易い。
見た目で判断出来るし、考えなくてもいい。
形のないモノは、難しい。
そもそもあるのかないのかも不明だし、
あるとしても、沢山なのか少ないのか。
大きいのか、小さいのか。
全部想像でしかない。
でも、大体は実は形のないモノの方が大切で。
大切なのに見えないから、不安になって、疑心暗鬼になって。
大切なのに見えないから、自分を、相手を信じて。信じたくて。
疑うも、信じるも、どちらも自分次第で。
自分で選んで、自分で決めてる。自分の責任で。
だからこそ、形のないモノは、それを信じる気持ちは、尊い。
「ジャングルジム」
子供の頃、ジャングルジムで鬼ごっこをしてた。
地面に足をついたら駄目で、ジム内だけでの鬼ごっこ。
それが楽しかった。
皆が入り混じって逃げるけど、やっぱりすばしっこくない子はすぐに捕まって鬼になって。
そして鬼になると、今度はなかなか人を捕まえられなくて、ずっとそれが続くと可哀想になるし面白くないし、誰かがわざと捕まって、の繰り返しだった。
楽しく遊んで、疲れて。
「もう終わろう。帰ろう。」誰かが言い出す。
そろそろ飽きてきてて、皆が納得してバラバラと帰りだす。
その時になって気付いた。
一人、多い。あの子は誰?
そう思って後ろ姿を眺めてたら、すうっと夕闇に溶けていった。
きっと、皆と遊びたかったんだね。
「声が聞こえる」
小さい頃から、聞こえる筈のない声が聞こえる時があった。
例えば、家に居て鍵をかけ忘れた時。
お風呂がガス給湯器だった時代に、種火を消し忘れた時。
2階にいるのに階下のストーブを消し忘れた時。
すぐにどうにかなる訳じゃないけど、でも危険に繋がりそうなうっかりがあった時に、何故か自分の名前を呼ぶ声が聞こえてた。
その時は、不思議なんだけど、家の中に誰も居ない事が分かりきってるのに、何故か階下に降りてみたりするんだよね。
で、自分のミスに気づいて慌ててスイッチを消したりする。
誰かに守られてるなって感じがしてた。
私の中では勝手に、早くに亡くなった父なんだろうな、って思ってた。
物理的には側に居る事は出来ないけど、でも、その分いつも側にいてくれて守ってくれてるんだろうな、って思ってた。
大人になるにつれてそんな事はなくなったけど、父がもう心配しなくても大丈夫、と思って安心して離れたんなら、親孝行出来たのかな、って勝手に思ってる。
長い間、有難う。もう大丈夫だよ。大好きだよ。