【見つめられると】
○教室(朝)
生徒たちの話声や笑い声。
机の上にうつ伏せになって寝ている達也。
奈々が達也の耳元で
奈々「おーい。遅刻だぞ~」
と囁く。
達也は顔を上げる。
奈々「おはよう」
と達也を見つめ笑みを浮かべる。
達也「……」
奈々「何……?」
奈々は首をかしげる。
達也「……」
奈々「ち、ちょっと何よ……!?」
奈々の顔が少し赤くなる。
達也「口の横に白い歯磨き粉ついてる」
自分の口の横を指差す。
奈々の顔が真っ赤になる。
奈々「このバカ!!」
拳を握り達也の頭を殴る。
達也「いてえ!!」
頭の殴られた部分を手で押さえる。
奈々「そういうことは、見てないで早く言いなさい よ!!」
ハンカチをブレザーのポケットから出して口の 横を拭く。
達也「考えてたんだよ」
奈々「何をよ!?」
達也「歯磨き粉じゃなくて生クリームなんじゃない かって」
奈々の手からハンカチが床に落ちる。
奈々「この……」
拳を握り震えさせ
奈々「アホ~!!」
達也の頭を殴る。
【お金より大事なもの】
○居間(夜)
破れた障子戸。
畳に転がるビール瓶や空き缶。
ちゃぶ台を間に向かい合う正座する娘とあぐら をかき缶ビールを片手に持つ真っ赤な顔した 父。
父「い……いま……なんて……言った……?」
目と口が大きく開く。
娘「だから断ってっていったの!!」
父「お前わかっているのか!?幸せになるチャンスを 逃してるんだぞ!!彼は大金持ちなんだぞ!!」
缶ビールをちゃぶ台に叩きつける。
娘「お金よりも私は自分で選択することが大切だと 思ってる!!これは私の選択じゃなくてお父さんの 選択でしょ!?」
父「この……っ!!」
空になった缶を握り潰す。
眉間にシワがよる。
父「ふざけるな!!」
両手を思いっきりちゃぶ台に叩きつけ立ち上が る。
娘「本当のことでしょ!?」
立ち上がる。
父「俺がお前の幸せをせっかく考えてるのに……もうい い!!出てけ!!」
娘を指指す。
娘「こんな家出てってやる!!」
障子戸を思いっきり閉めて出てく。
父「……」
あぐらをかいて座る。
父「ちくしょー!!」
両手でちゃぶ台を返す。
【月夜】
○森の中(夜)
満月の夜空。
真っ暗な森。
狼の鳴き声が聞こえる。
後ろから草むらをかき分ける音がする。
不知火「何かくる!?」
剣を鞘から抜くと勢いよく後ろを振り向く。
ネコ「にゃー」
満月に照らされたネコがこちらを見て鳴てい る。
不知火「なんだネコか……」
息を吐き、肩を落とす。
剣を鞘にしまうとしゃがみ込んでポケットから パンを取り出しネコの前にさしだす。
不知火「これをやるからもう帰れ」
ネコ「にゃー」
パンを咥えると背をむけ森の中へ去っていく。