本当に強い気持ちは言葉にできない。
表す言葉はある。
表現は不可能ではない。
けれども、心が拒んでしまう。
溢れるほど
苦しいほど
抱えきれないほど
慟哭するほど
溺れるほど
それほどの激しい感情。それほどの確かで、無限の感情。
その無限に限りをつけることを、心が拒む。
「あなたの愛はそれほどのもの?」
「あなたの憎しみはそれほどのもの?」
「あなたの幸せはそれほどのもの?」
「あなたの悲しみはそれほどのもの?」
「あなたの絶望はそれほどのもの?」
「あなたの・・・はそれほどのもの?」
そう、問われてる気がして。
お題「言葉にできない」
神社には色んな人が願いに来る。
それは良きものも、悪きものも、
尊きものも、愚かしきものもある。
その願いも大切なモノであり、切実なモノ。
だが、
全能の神でもなければ、奇跡を操る神でもなし。
全ての願いを叶えてやるすべはない。
無限の神通力もない。
故に…
選ばざるを得ない。
選んでも、確実に叶えてやれるわけではない。
ただ少し運気を傾け、縁を授けるだけである。
そうしてやっと、複数の願いが叶う手伝いができるわけです。
そんな神様の願い事は、願いを確実に叶えてやりたいというもの。
たとえ、一つだけでもいい。
運気でも縁でもどうしようもない、そんな願いをたくさん聞いてきた。
その願いが、傲慢で、ワガママで、他力本願ならば捨てる。
だが、真に尊く、清く、ささやか且つ神様が叶えることのできない願い。その願いを叶えてあげたかった。
神様のたった一つの願い。叶えてあげたい一つの願い。
誰が叶えてくれるというのか。
お題「一つだけ」
ルールは簡単
朝に嘘をつき、夕にはバラす。
約束事はたった一つ
"人を傷つける嘘はついてはいけない"
4月1日、今日この日だけは!
善なる嘘で埋め尽くそう!
忘れてはいけない。嘘はこんなにも簡単につけると。
忘れてはいけない。嘘はこんなにも簡単に騙せると。
忘れてはいけない。嘘はこんなにも唐突につかれると。
忘れてはいけない。嘘は使い方次第であると。
忘れてはいけない。嘘でこんなにも幸せになれると。
忘れてはいけない。嘘でこんなにも笑いに満ちることを。
忘れてはいけない。嘘で一日の終わりが楽しみになることを。
いつかは嘘が悪ではなく
泥棒の始まりでもなく
笑いと優しさをもたらすためだけのものとなることを願って。
お題「エイプリルフール」
虫は嫌いです。
その見た目、感触...
けれども不思議なことに
春は 野に舞う蝶 菜の花にとまる天道虫
田んぼの蚊柱 キャベツの青虫
夏は うるさい蝉の鳴声 子供が喜ぶカブト虫にクワガタ虫
夕暮れのヒグラシ 夜の川辺の蛍
秋は 仲の良さげなオンブバッタ 夕日に映える赤トンボ
涼やかな鈴虫の声 キリギリス、松虫の声
冬は 雪のない日に嬉しい雪虫 土の中の蛹
ああ、もうこの季節か
ああ、もう終わったのか
また来年。また今年。また来年。
来れば鬱陶しく、去れば寂しくて。
ずっと追ってしまう。ずっと待ち遠しい
決して、好きじゃないのに
お題「好きじゃないのに」
神様がいました。
何を見ているのか、何を考えているのか誰も知りません。
神様がいました。
ずっと遠くをご覧になっています。
神様がいました。
そっとため息をつかれたようでした。
サワサワと田植えが始まる前に育った雑草が揺れています。
風向きが変わったようです。
遠くに雨雲が見えました。
どうやら雨になりそうです。
田畑の神々は嬉しそうです。
家の神はそっと家の主に目をやります。
八百万の神々が雨に備えます。
それはまるで祭りのよう。
けれど人の世は静かで静かで。少し寂しいものです。
もう雨を喜び、恐れ、心配して空を見上げる者は減りました。
最早、誰にも求められていない雨。
神様がいました。
雨を降らせなさいました。
人々は煩わしそうに空を見上げます。
神様はそっと目を閉じます。
子供の声が聞こえました。
雨雨フレフレ母さんが。
神様はそっと目を開け、その子に優しく雨を落としました。
夏がくれば、雨は荒々しくなる。
今年もありとあらゆる命が暴雨にのみこまれる。
春に宿り 夏に育ちし 八百万の神々 付喪神 数多の生き物の 命
夏の神よ。どうかもう少し待ってください。
小さな子が純粋に雨を楽しむ時期を。
厳しい冬の季節を乗り切り、疲れた生き物達へ束の間の休息を。
暖かい日差しと優しい慈雨の季節。
この束の間の平和をどうか与えさせ給え。
神様はそっと春の野に立っております。
人々の往来を、数多の生き物の戯れを
静かに。静かに。眺めております。
お題「ところにより雨」