夕本(ユウモト)

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4/12/2024, 3:47:46 AM

     本当に強い気持ちは言葉にできない。
     表す言葉はある。
     表現は不可能ではない。
     けれども、心が拒んでしまう。



         溢れるほど
        
         苦しいほど
      
         抱えきれないほど
 
         慟哭するほど

         溺れるほど




  それほどの激しい感情。それほどの確かで、無限の感情。

  その無限に限りをつけることを、心が拒む。

「あなたの愛はそれほどのもの?」
「あなたの憎しみはそれほどのもの?」
「あなたの幸せはそれほどのもの?」
「あなたの悲しみはそれほどのもの?」
「あなたの絶望はそれほどのもの?」


    「あなたの・・・はそれほどのもの?」

      そう、問われてる気がして。



お題「言葉にできない」
        

4/3/2024, 11:04:22 AM

神社には色んな人が願いに来る。
それは良きものも、悪きものも、
   尊きものも、愚かしきものもある。

その願いも大切なモノであり、切実なモノ。
だが、
全能の神でもなければ、奇跡を操る神でもなし。
全ての願いを叶えてやるすべはない。
無限の神通力もない。

      故に…

    選ばざるを得ない。


選んでも、確実に叶えてやれるわけではない。
ただ少し運気を傾け、縁を授けるだけである。
そうしてやっと、複数の願いが叶う手伝いができるわけです。

そんな神様の願い事は、願いを確実に叶えてやりたいというもの。
たとえ、一つだけでもいい。
運気でも縁でもどうしようもない、そんな願いをたくさん聞いてきた。

その願いが、傲慢で、ワガママで、他力本願ならば捨てる。
だが、真に尊く、清く、ささやか且つ神様が叶えることのできない願い。その願いを叶えてあげたかった。

神様のたった一つの願い。叶えてあげたい一つの願い。
誰が叶えてくれるというのか。

お題「一つだけ」

4/2/2024, 5:09:05 AM

ルールは簡単
朝に嘘をつき、夕にはバラす。

約束事はたった一つ
"人を傷つける嘘はついてはいけない"


4月1日、今日この日だけは!
善なる嘘で埋め尽くそう!

忘れてはいけない。嘘はこんなにも簡単につけると。
忘れてはいけない。嘘はこんなにも簡単に騙せると。
忘れてはいけない。嘘はこんなにも唐突につかれると。

忘れてはいけない。嘘は使い方次第であると。

忘れてはいけない。嘘でこんなにも幸せになれると。
忘れてはいけない。嘘でこんなにも笑いに満ちることを。
忘れてはいけない。嘘で一日の終わりが楽しみになることを。

いつかは嘘が悪ではなく
泥棒の始まりでもなく
笑いと優しさをもたらすためだけのものとなることを願って。

お題「エイプリルフール」

3/26/2024, 8:12:25 AM

虫は嫌いです。
その見た目、感触...

けれども不思議なことに

春は  野に舞う蝶 菜の花にとまる天道虫
    田んぼの蚊柱 キャベツの青虫

夏は  うるさい蝉の鳴声 子供が喜ぶカブト虫にクワガタ虫
    夕暮れのヒグラシ 夜の川辺の蛍

秋は  仲の良さげなオンブバッタ 夕日に映える赤トンボ
    涼やかな鈴虫の声 キリギリス、松虫の声

冬は  雪のない日に嬉しい雪虫 土の中の蛹


ああ、もうこの季節か

ああ、もう終わったのか

また来年。また今年。また来年。
来れば鬱陶しく、去れば寂しくて。
ずっと追ってしまう。ずっと待ち遠しい

決して、好きじゃないのに





お題「好きじゃないのに」
    

3/25/2024, 5:11:27 AM

神様がいました。
何を見ているのか、何を考えているのか誰も知りません。

神様がいました。
ずっと遠くをご覧になっています。

神様がいました。
そっとため息をつかれたようでした。


サワサワと田植えが始まる前に育った雑草が揺れています。
風向きが変わったようです。
遠くに雨雲が見えました。
どうやら雨になりそうです。


田畑の神々は嬉しそうです。
家の神はそっと家の主に目をやります。

八百万の神々が雨に備えます。
それはまるで祭りのよう。
けれど人の世は静かで静かで。少し寂しいものです。
もう雨を喜び、恐れ、心配して空を見上げる者は減りました。

最早、誰にも求められていない雨。

神様がいました。
雨を降らせなさいました。

人々は煩わしそうに空を見上げます。

神様はそっと目を閉じます。

子供の声が聞こえました。
雨雨フレフレ母さんが。

神様はそっと目を開け、その子に優しく雨を落としました。




夏がくれば、雨は荒々しくなる。
今年もありとあらゆる命が暴雨にのみこまれる。
春に宿り 夏に育ちし 八百万の神々 付喪神 数多の生き物の            命

夏の神よ。どうかもう少し待ってください。
小さな子が純粋に雨を楽しむ時期を。
厳しい冬の季節を乗り切り、疲れた生き物達へ束の間の休息を。
暖かい日差しと優しい慈雨の季節。
この束の間の平和をどうか与えさせ給え。








神様はそっと春の野に立っております。
人々の往来を、数多の生き物の戯れを
静かに。静かに。眺めております。


お題「ところにより雨」

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