「お疲れさん」
そう、恋人が言いながら、缶ビールを差し出す。自分は飲めないのに、俺のために冷蔵庫に常備してくれているものだ。
礼を言い、缶を開ける。
「オレらって、こき使われてねぇ?」
苦笑しながら同意した。
「やっぱ、そうだよな。オレらって年長組とはいえ、21歳だぜ? 勘弁してほしいよ」
おまえは、ぶーぶー文句を垂れる。でも、最近のおまえは、一時期の病みがなくなっていて、安心した。
ふたりで休んで、また明日がんばろう。
拳で、ぶん殴られた。
「痛ってぇ…………」
オレは、きっと死んだ魚みたいな目でおまえを見てる。
おまえは、ほんの少し両目に涙を浮かべ、床に座り込んだオレを見下ろした。おまえの方が痛そうじゃん。
オレが悪かったよ。いつもそうだよ。おまえは正しいよ。
恋人だった男の命日がきた。
墓前に煙草と缶ビールを供え、手を合わせる。
夏の終わりに死んだおまえは、完璧だったよ。
天気雨。蝉の死骸。枯れたひまわり。何を見ても、おまえのことを、思い出す。
隣でもがいてたのを、知っていた。助けているつもりだった。
今でも、燃えて骨だけになったおまえを抱えて走った日のことを鮮明に覚えてる。
星に名前を付けられるなら、どうしようか?
世界で一番特別な人の名前を付けようか。いや、重いかな? それは今更かな?
ただ、おまえは全ての例外になってしまったから、どうしても考えてしまう。
最初は、エラーだったんだよ。でも、例外処理をしたせいで、おまえはオレに祟られた。カワイソーに。
絶対に離さない。あの輝く星が燃え落ちても。
あたしと一曲踊ろうよ。
なんで、おまえなんかと?
いいじゃん。もう夢の中でしか会えないんだからさ。
オレは、おまえだ。おまえは、オレだ。
何が悲しくて自分と踊らなくちゃならない?
案外、楽しいかもよ?
嫌だね。オレは、呪いを解いたんだ。おまえとは、関わりたくない。
自分とは、一生付き合わなくちゃいけないんだよ?
どうせ、あたしたちは運命の手のひらの上で踊るしかないの。