その花は、ガラスで出来ていた。
その花は、時が経つに連れて、ひびだらけになった。
その花は、ある日、粉々にされた。
「美しくないね」と、彼は自嘲する。
もう綺麗じゃない。もう誰にも見られたくない。
でも、それを見付けた人は言った。
「まだ燃えてる」「直せる」「俺が手伝う」と。
かつて美しい花だった粉を、炉に入れて、もう一度咲かせよう。
そう思えた彼は、幸せ者だ。
そんな先のことは知らねぇよ。
明日のことだって分からねぇのに。
オレは、自分が大人になれると思ってないガキだったんだぜ?
あーあ。だいたい、答えを出すのが苦手なんだよ。
ただ、これからも、おまえといられりゃいい。
家族にしか懐かない子供だった。
不登校だったし、友達なんていないし、恋なんてしないと思ってた。
ある頃から、外に出たら、人の振りをするので精一杯。そんな日々。
その中で、おまえに出会った。苦手だったよ。
面倒見がいいところも、頭がいいところも、勝負強さも、何もかもが憎らしかった。
正しい人って、怖い。オレは、正しくないから。
善人が、天国行きのチケットを持っているとしたら、オレはどうなる?
だから、ガキのオレは、あの世なんてものはないということにした。
ある日、オレは、おまえへの恋心を自覚する。
地獄って、ここのことだったんだ。
この戦時下が、日常なんだってさ。クソ食らえ。
でも、戦時下だってことを、みんな努めて忘れてる。少なくとも、オレはそう。
少年兵を部活に誘うみたいに募って、日々防衛を任せる。
そんな都市なのに、人口の流出は少ない。そういう場所なんだ、ここは。
オレが、おかしいのか?
そうなんだろう。“適応”出来ないのなら、ここに居場所はない。
「走り続けなくては、この場所に留まれない、か……」
好きな色? 特にない。でも、金髪は好きかな。
おまえの色だから。
オレの茶髪は、地毛だしなぁ。染める気はないな、メンドーだから。
オレなんて、空白みたいなもんだよ。
おまえが染めればいい。