あなたはどんな形でさえみんなが救われるまで
ずっと前だけを向いて走り続ける。
そんなあなたを愛おしく思います。
あなたが願う未来が来たらあなたは止まるのでしょうか。
止まったあなたは私の愛するあなたですが既にあなたでは
ないと思うのです。
そうなってしまうなら、永遠に人類は救われなくっても、
‘無限の星々,を掴まなくってもいいと思うのです。
あなたの旅路をどうか終わらせないで。
あなたが走り続ける姿を見ればどんな星々でさえ
己を恥じて翳るでしょう。
あなたはブラックホールに例えられていましたね。
あなたのその歩みは、旅路はどんな聖人にも英雄にも
なし得ないものです。
あなただからこそ歩んでいけるのだと思います。
一人ぼっちで、ずっとずっとずうっと何度でも
救済を為そうとするあなたを誰が弾劾できるのでしょう。
誰があなたを責められるのでしょう。
弱者を踏みつけ成長するしかない人類を憎んで憎んで、
それを捨てて救済を目指すあなたとその望みを、
だれかを踏みにじりまただれかに踏みつけられてきた者がどうして足蹴にできましょうか。
だからどうか、あなたはこちらを振り向かないで
走り続けてほしい。
こんなことを言わなくてもあなたは走り続けるけど、
あなたの背中を押せる一人になりたい。
愛おしみを向けたことがあるのは家族と親友と温かい
抱きまくらだけです。
薄情に思えてきましたがそれもそれできっと
人というものです。
あなたの愛情はいったいどこへ向かうのでしょうね。
どうか、どうか、私へ向かいませんように。
きっと私は愛を返すことも突っぱねることもできずに
蹲ってしまうでしょうから。
厳しい冬の朝に見たことだ。
良く顔を見ていた野良猫が道路で冷たくなっていた。
少し手を合わせてから学校に出掛けたが、
帰る頃には亡骸は消えていた。
誰かが弔ってくれたのだろうか。
私は、彼女に何かできたのだろうか。
昼間の暖かい太陽の下、彼女が私の家の縁側で
毛づくろいをする幻想を思い浮かべて、すぐに消した。
また会えたらその時は___。
だなんて都合が良すぎるか。
きれいな黒いロングスカートと一緒に買った
白いセーター。
昔まみえたあの子みたいに見えるかなって。
きれいなものが好きだった。
北原白秋や宮沢賢治、中原中也の詩を読むと
思わず笑みが溢れる。
リズム感が好きだと言った。
言葉選びが素晴らしいと言った。
溢れる情景が私の喜びであり、
文章は今を生きる私と過去を生きたひとを引き合わせ
対話できる唯一の手段だった。
言葉の美しい調べと深い意味も、日本語の少し違うだけで顔を変えるところが大好きだった。
いとけない少女と煉瓦と花。
玻璃のグラスに深紅の葡萄酒。
薤露青の空の中で南十字に至る水。
いつから私は忘れていたんだろう。
ギクシャクした学校生活を過ごす半年前か。
それとも受験が終わった後からだろうか。
思い出せ、私を形作ったものを。
今の私を創ったすべてがそこにある。