Fawn

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10/24/2022, 10:17:38 PM

春を待ちわびている。

世界が白やピンクに色づき始め
桜の蕾が膨らみ出すと
まだかまだかと期待が高まる。

それなのに。

桜の花が咲き始めると不安になる。
別れがすぐそこに見えている。

満開の桜。散りゆく桜。
美しさと儚さ。
待って待ってと願ってしまう。

もう少し、あと少しだけ。

そしてまた季節が巡って。
私は春を待ちわびている。


-行かないで-

10/23/2022, 1:14:32 PM

ひこうき雲だ。

子どもの頃、ひこうき雲を見つけると
飛行機に向かって手を振っていたのを思い出す。

パイロットに声が届くと思っていた。
小さな体の小さな私から発せられた大きな声は

風に乗って、雲を突き抜けて。
星を伝って、銀河を超えて。

時を超えて、今の私に届いた。

おーい。こっちも元気にやってるよー。


-どこまでも続く青い空-

10/23/2022, 5:14:39 AM

とうとう秋になってしまった。

クローゼットの奥から上着をひっぱり出して
あなたを想う。

人の心も簡単にしまい込めたらいいのにね。

あなたの事を思い出さないように
奥へ奥へ。

そこにあった事すら忘れてしまって
見つけ出せないくらいに。

そうしたら、次にひっぱり出した時には
思い切ってさよならできるかな。

またこの季節を好きになれるのかな。


-衣替え-

10/21/2022, 10:52:20 PM

心を削るように歌う
あなたをずっと見ていた。

相手の目を見て話を聞くその横顔も。
優しい笑顔も。
時折見せる無の眼差しも。

いつかこうなる事も分かっていた気がするのに。
あなたを助けてあげられなかった。

あなたを助ける夢を見た事がある。
ゆっくり休んでほしい、と伝えるとあなたは
僕にそんな時間ないよ、知ってるでしょ?って。

笑って去ろうとする背中に私は叫ぶ。
生きていればいつか会える、
しばらく会えなくてもいいから生きていてほしい、と。
あなたはハッとして、優しく微笑んでくれた。

もう届かないその言葉を
今も天国のあなたに叫んでいる。


-声が枯れるまで-

10/20/2022, 1:21:23 PM

11時。
朝でもない、昼でもない。
ちょっと置いてきぼりにされたような
この時間が好きだ。

カランコロンカラン。
昔からある喫茶店。
マスターがにこっと笑って、

「ご注文はコーヒー牛乳?」
「もう子どもじゃないってばー。
マスターのおいしいコーヒーください。」

私も笑って答える。
初めて一人で来た時はまだ中学生だった。
大人になった気分で背伸びしてコーヒーを頼んだ。

そんな私にマスターは生意気だと諌める事もなく、
温めたミルクと砂糖たっぷりの
コーヒー牛乳を出してくれた。
おいしくて温かくて、ここに居ていいよって言われたような気がした。

あれから何年だろう。
この居心地のいい喫茶店で
私はまた11時を過ごしている。


-始まりはいつも-

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