イルミネーション。
街がオレンジ色に染まる。
足早に歩く人、幸せそうな恋人たち。
プレゼントの相談でもしているのか、
母親と嬉しそうに歩く小さな女の子。
ああ、やっと見つけた。
30年前のわたし。
おもちゃ屋さんでぬいぐるみを楽しそうに選んでいる。
で、その向こうでプラモデルを抱えてるのが僕だね。
彼が言った方に目をやると、
女の子より少し幼く見える男の子が大きな箱を抱えている。
ふたりの出会いをさかのぼったら、
こんなに昔まで来てしまった。
幼いふたりはまだ知らない。
将来とても大事な人同士になる事。
-すれ違い-
乾いた空。
少し冷たい風。
赤や黄色の落ち葉の絨毯。
足元の感触。
焦げ茶のブーツが嬉しそう。
これから寒くなるというのに
心はちょっと暖かい。
-秋晴れ-
初めて会ったのは満月の夜だった。
僕の命の灯火は消えようかという所だった。
たまたま通りがかったであろうその人は、
その大きな手で僕を包むと、そっと抱きしめてくれた。
僕はとても胸がポカポカして、
夜だったのに日向ぼっこしてるみたいに
気持ち良くて、眠くなって。
野良猫だった僕は、最後の最後に幸せを教えてもらった。
あの時から。
ずっとその人のそばにいる。
僕が何度生まれ変わろうと。
その人が何度生まれ変わろうと。
嫌われている時があっても。
遠すぎて、見つけるのが大変でも。
あの夜の日向ぼっこが、
僕の胸をずっと温めてくれているから。
-忘れたくても忘れられない-
休日の朝。
いつもより少し寝坊した。
カーテンが風に揺れている。
コーヒーの香りがちょっと苦い。
でもいい匂い。
おはよ。
冷蔵庫に玉子残ってたから使ったよ。
ベーコンエッグ。
トーストとバターの香り。
彼の作るごはんは
私のより完璧だ。
ありがとう。いただきます。
ほんとに上手だね。
焼いただけだよ。
窓の外を眺める。
今日は何をしようかな。
-やわらかな光-
青くて、暗い。
透明で、月のように寂しい。
空気を切り裂く、静かな閃光。
鏡のような水面に落ちる、一粒の雫。
すべてを見透かされるような、
焦りと安堵。
-鋭い眼差し-