utatane

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3/25/2023, 2:23:39 PM

「特別彼女のことを愛してるってわけではなかったんだけど、この子が好きって気持ちはこれから先も変わらないだろうなって思って、僕からプロポーズしたんだ」

いつだったか。
なんの気なしに、彼に結婚を決めた理由を聞いてみたことがある。
ハンガーに吊るされたシワ1つない白いシャツを羽織りながら、彼は言った。
さっきまで私に優しく触れていた指で、他の人がアイロンをかけたシャツのボタンを丁寧に留める。
「それじゃあ、ありがとうね」
今日もいつもと同じようにお互いに求め合い、満たされれば、私は平凡な日常へ戻るし、彼は特別愛してはいないけれどこれから先も好きな人の元へ帰っていく。

彼が帰った後のベッドに飛び込む。
Tom FordのBlack Orchidの香りが、私は好きではない。
でもシーツに残る、このむせかえるくらい甘ったるい香りでしか、私はあなたの気配を感じることが出来ない。


【好きじゃないのに】

3/24/2023, 1:44:08 AM

勢いよく差し出された私より小さな冷たい手を、なんの躊躇いもなく掴んだあの日。
まるで思ってもみなかったというように目を丸くして、小さく微笑んだ君は、私の手を宝物みたいに優しく握り返してくれた。
「僕が絶対に守るから」
夕日が2人の影を伸ばす。
私よりも背丈の低い、頼りない影。
「期待してるね」
私の言葉に返事をするみたいに、彼はぎゅっと力を込めて私の手を握った。


【特別な存在】