眠れなくなるくらい、この人が好きだ、と思える恋愛をするたび、
⎯⎯ああ、わたしはまだ子どもでいられるんだ。
と、そこはかとなく安心する。
【眠れないほど】
間接照明の夕焼けみたいなライトで過ごす午後3時47分。
HomePodから寺尾 聰の『ルビーの指環』が流れている。
最近はめっきり寒くなり、もうどこへ行くにも──リビングや仕事部屋、寝室など──毛布を手ばなせない季節がきたんだなあとしみじみ思う。
マイブームのそば茶のティーパックを水筒へ落とし、ぽこぽこと沸騰したお湯を注ぎいれる。
水筒では、わたしのお気に入りのグラス1.7杯分のしか飲めないので、そば茶のティーパックは朝から何番も何番も煎じられて、この時間にはすっかり出がらしになっている。
そば茶とは到底よべない、ほぼ透明のお湯。
ルビーのリングを買おうかしら。
この世界のどこかで、指にはめたルビーを探している人がいるかもしれないのだから。
【夢と現実】
吸いこんだ空気が肺をさす。
のどの奥がくっと詰まって、まるで水のなかにいるみたい。
あなたはよその国からきたインベーダー。
話しかけても、ちっとも笑ってくれないわ。
おっきな窓には淡いオレンジ色。
太陽がサヨナラすると、あなたもいなくなってしまうのね。
それでもわたし、泣いてお別れなんてしたくないから、流れた涙は星になってお空へかえる。
わたしはここよって、それが目印よ。
【終わらせないで】
長袖のセーターで見えなくなるね、
わたしのひみつの真っ赤なおまもり。
大丈夫だよって、今なら言ってあげられるけど。
【冬になれば】
———人間ってのはね、天界から何らかの理由で降りてきた天使なんだよ!
なんてことを真剣に話す君を見て、僕は笑った。
本当だもん!と眉間にシワを寄せて怒る君。
でも、僕は話の内容に笑ったんじゃない。
自分では気付いてないだろうし、これからも教えるつもりはないのだけれど、君ってさ、熱が入ると鼻がぴくりと少し動くんだ。
それが僕はとても好きだ。
その無意識に動く鼻が、可愛らしくてとても好きだ。
君の話が本当だったとして、僕は天界から降りてきて良かったと心の底から思う。
だって君が人間だということは、天界に君はいないというだろう?
君がいない天界はさぞかしつまらないだろうね。
———もし神様が目の前に現れたとして、君を天界に戻してやろうと言っても、僕は丁重にお断りするよ。
僕は君の隣で、飛べない翼を持った天使でいたい。
【飛べない翼】