君は世界で一番美しい泥人形
見た目は普通の人形だから
誰もが君を持て囃す
アチラコチラを引っ張って
どうにかこうにか取り入って
君といる事がステイタス
君が心を売りに出す
私は君を知っている
君の中身を知っている
君の脆さを知っているから
私は君に触らない
君を知らない人の群れ
少しずつ君が崩れてく
色が剥げて醜くなって
君の形が変わっていく
君を知らない人の群れは
君に興味を失くした群れ
心の売れ残りを抱えた君が
崩れた笑顔で座ってる
私は君からこぼれ落ちた
欠片をありたけかき集める
私からこぼれ落ちた水滴が
ひび割れた君に吸い込まれ
どうしてもっと早く
どうしてもっと早く
「−誰よりも、ずっと−」
テーブルの上、一つのグラス
注がれる苦い水
嫌がっても飲み干さないと
私は此処で生きられない
苦い水が喉を通る
水は私を構成する
私は汚れを知っていく
水は次々と注がれる
気づけばグラスが増えている
苦い水が脳を溶かす
気づけば毒を飲んでいる
吐き出したくても飲み込まないと
私は此処で生きられない
私は此処で生きられない
***
テーブルの上、一つのグラス
怯えた誰かが椅子に座る
私はグラスに水を注ぐ
怯えた誰かが私を見ている
私は彼女の手をとって
その手にグラスを握らせる
「−不条理−」
星が空に溢れた日
君が世界に溶けた夜
幾千もの蠢く光
夜光虫が鳴いた夜
星が流れる川の中で
君が手から溢れ落ちた
君を失くしたあの夜に
ただひとつだけ掴めたもの
光の中から掬い出した
君の目だけを連れ出して
涙を流さぬ君の目が
思い出させたあの約束
守れるわけない約束に
私の涙を一滴捧ぐ
「−泣かないよ−」
特にすることも無い夜に
丘の上で仰向けになり
満天の星空を眺める
こんなに深い夜だというのに
空に瞬く星が眩しく
私は目を閉じてしまう
一等星、二等星、三等星
紅色、橙色、白色
数えきれない
数えたくない
こんなに深い夜だというのに
目を閉じても
耳を塞いでも
星の声が聞こえてくる
私を笑っている声が聞こえる
数えきれない星の光に
私は希釈されていく
いつか散らばって消えてしまうから
誰か早くこの夜を終えて
目を閉じて
耳を塞いで
いつか私はこの夜を越えて
「−星が溢れる−」
美しい立方体形の箱に籠もり
座して活字の列を追う
ページを捲って人知れず
私の世界で君を追う
君と付き合うアイツらは
多分、表紙で君を知る
私は君の足跡で
書かれた文字で君を知る
捲る捲る
巡る巡る
私の頭で文字が踊る
私が君を踊らせる
あれ、なんだか怪しい雲行き
此処から先は第二章
君だけが知る君の秘密
私だけが暴く君の秘密
BAD ENDはすぐそこに
私はそれでも君を知る
「−もっと知りたい−」