3/5/2023, 5:01:49 AM
君が私に向ける目の色は
澄んだ藍の綺麗な色
川魚を泳がせて
鳥や獣が息をする
私が君に向ける目の色は
濁った朱の澱んだ色
鉄のような粘った大地
岩と砂礫を散りばめた
君と私は違う色
混ざり合ってはならぬもの
この目とその目を取り替えて
二人で同じ色にしましょう
それがいいと笑う君は
私の眼に手を伸ばす
君の色が欲しいけど
私の色で汚すのならば
私の光は消しましょう
「−大好きな君に−」
3/2/2023, 8:53:52 AM
テーブルに運ばれてくる料理の行列
機械のように平らげる
食前酒を飲み干す
前菜を食べる
副菜を食べる
主菜を食べる
食べても食べても次を求める
料理は止まることを知らない
食べる
食べる
食べる
満たされる内蔵
満たされぬ大脳
底抜けの渇望と糧に
私は喰らい続ける
「−欲望−」
3/1/2023, 9:55:54 AM
木枯らしの吹くローカル線のホーム
私は手を息で暖めながら待つ
君が現れるのを待つ
私をあの街まで連れて行く線路
私を君から引き剥がす列車
最後の願い
最後の駆け引き
私は賭けた
私は待つ
君を待つ
遠くから警笛の音が聞こえる
「−遠くの街へ−」
2/27/2023, 3:41:16 PM
ひんやりと冷たい水の底
ゆっくりと対流する水の流れが
服をゆらゆらと揺り動かす
濁った水の中を泳ぐ小魚
水の中で絡み合う流木
静と動のオブジェクト
そのどちらでもない私
そろそろあそこに戻らないと
思い立ってみたところで
身体が全く動かない
溶けた眼球で腕を見ると
そこに揺蕩う白い骨
白い指から除く隙間に
鈍く広がる薄暗い水面
あそこにはもう戻らない
あそこにはもう戻れない
すぐそこにある筈の境界線は
私にとってあまりにも遠い
もう逃げられない私には
「−現実逃避−」
2/27/2023, 3:51:43 AM
公園のベンチで月を見ながら
君と過ごした凍える夜
あの日交わした互いの夢が
結んだ実の数を数えてる
君が此処を出ていって
私はずっと此処にいる
君に追いつく事は出来なくて
私は此処に根を張った
君は今、誰と話してる?
私は今、此処で月と話してる
「−君は今−」