彼女と寝転がって星を見ていた。
「あの星とあの星、あの星を繋いで秋の大四辺形」
空を指差して教えてくれる。
が、32.6光年も離れているため、どの星を指差しているのか分からない。
それでも僕は楽しそうに笑いながら教えてくれる彼女の横顔を見て幸せを噛み締めるのだった
同じ毎日を繰り返している。
インスピレーションを求めて散歩。
生きるためにやりたくもないアルバイト。
作家を目指して三十路手前。
私は作家になれないのではないか……
そんな言葉がふと頭を過る日々が増えた。
諦めてしまえば楽になるかもしれない。
でも、輝く舞台を眺め続けて、ゆっくりと心が壊れていく私を見るのも嫌だ。
だから、私はあいも変わらず筆を取る。
きっと明日も、今日と変わらない作家志望の日々を繰り返すのだろう。
いつか、日の目を浴びると信じて……
漫画のような一コマ。
横断歩道に飛び出した子供。
それに突っ込む自動車。
『時よとまれ』
僕はそう願った。
が、自動車が子供にぶつかった衝撃音。
そして、飛び散る血飛沫。
その瞬間は時が止まったようにゆっくりと流れた。
「些細なことでも見落としてはいけない」
師匠はそう言っていた。
「この世界……というより、人生が一冊の小説であるならば、どこに伏線があるかは分からない」
師匠にこれまで伏線はありましたか? と問う。
「まだ、分からない。もしかしたら、この会話が後の伏線になってるかもしれない」
そんなことを言っていた。
師匠の人生が一冊の本だったら読んでみたいです。
そう告げる。
「僕は一冊の本になんてならない。誰かの物語の脇役が関の山。僕はモブだからね」
一年前に死んだ友人からLINEが来た。
葬式にも出た。
親族とも話した。
連絡先は消さなかった。
LINEには思い出があった。
時々見返していた。
ポコタンって着信が鳴った。
確認してみると死んだ友人からだった。
僕は怖くてLINEを開くことができないでいる。