Moon

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7/1/2023, 9:12:47 PM

僕は窓を見るのが好きだった。
窓の外を見るのではなく、
窓越しに見える君が好きだった。
君はいつも大人しく本を読んでいる。
その時の表情はとても豊かで可愛らしい。

病院はいつも退屈だったけど、
窓越しに見る君のおかげで
楽しくなった。

【窓越しに見えるのは】



#67

7/1/2023, 9:07:04 AM

君との赤い糸が
プツンと音を立てて切れた。

その日から君と僕は赤の他人。

たった一つの糸。
大切な糸。
何本も入り交じった強い糸でも
引っ張り過ぎると徐々にほつれ、
最後には細い細い1本の糸になって、
耐えきれなくなったら切れる。

僕はその大切な糸を切らせてしまった。

【赤い糸】


#66

6/29/2023, 1:59:54 PM

あの雲の塊を見る度、
僕はあの日のことを思い出す。

あの日、僕と君は
あのイカれた家から逃げ出すように
持ってるお金全てと携帯だけを持って
県外に行こうとしていた。
君とはあまり関わったことは無かったが、
君がイカれた家にいることを知った僕は、
ほっとけなかった。
一日一緒にいて仲良くなった君と
入道雲を見ながら
色々話した。
君は海を見てみたいと、
青く広がるあの地平線の向こうに行きたいと
言った。
だけど、あいにく入道雲がこちらに来ていて、
すぐにここを離れないと雷雨に当たりそう
だからと、あまり海を見れなかった。
結局駅まで遠く雨に打たれながら、
笑いあった。
そして、電車に揺られながら、
“また、2人で海を見に行こう”と
約束をした。
だけど、あとひと駅で県外、
もうすぐ日をまたごうとしていた時に
警察に補導された。

逃げようとした僕とは裏腹に
君は『僕たち家出してきました』と
警察に笑顔を向けた。

久々に学校に行くと、
腕には包帯、あちこちに痣や傷がある
君がいた。
僕は声をかけようとしたが、
君は何も言うなと言わんばかりに
ニコッとした。
僕は何も言えず、なにも出来ず、
モヤモヤだけが残った状態で
学校を卒業をした。

今君はどうしているのだろうか、
無責任に手を貸してしまった僕を
恨んではいないだろうか、
あの時、君は何を思っていたのだろうか、
君もこの空をどこかで見ているのだろうか、
あの海の向こう側へ行けただろうか…。

思うことは沢山あるけど、
全て謎に包まれたまま。

また、君に会いたいな。

【入道雲】


#65

6/28/2023, 11:10:11 PM

[⚠️津波や地震の話です。
気分が悪くなる方は読まないで下さい。]

蛙や蝉の鳴き声が聞こえ始め、
いよいよ、夏が始まる。

僕は夏が好きだ。
外に出るのが楽しくなる。

だけど、ある年をきっかけに
僕は夏が大嫌いになる。

夏休みのある日、
幼なじみの家族と僕の家族のみんなで
海に行った。

その日、僕は家族を失う。

楽しく遊んでいた時、
立ってるのもやっとなくらいの
揺れを感じた。
揺れはすぐ収まり、
また、遊び始めた僕たち。
僕はトイレに行きたくなって、
ホテルに戻った。
その時に警報が聞こえた。
嫌な予感がした。
みんながいる海に戻ろうと思った時、
ホテルの受付の人に止められた。
その理由は聞くまでもなく、
扉の向こうを見ると、
大きな津波がこちらに向かってくる。

僕はみんなに伝えに行こうと必死だった。
だけど、ホテルの人に思いっきり抱えられ、
それは叶わず、高台にあったホテルですら、
少し浸水していた。

その日から僕は大好きな家族にも
幼なじみにも会えていない。

今でも思う。
〝僕だけが助かって良かったのだろうか〟と。

でも、
〝みんなの分まで僕が強く生きていこう〟と
決めている。

【夏】


#64

6/27/2023, 11:38:18 AM

僕は物心ついた時から
家族からも邪魔者扱いされ、
学校でも常にぼっちだった。

僕は常に自分を押し殺し生きてきた。
ちゃんと息もしてて、ご飯も食べて
普通の日常を生きてるはずなのに
生きてる心地がしない。

誰かに邪険にされず、いじめもなく、
1人で僕が僕でいれる
どこか遠くここではないどこかへ
いきたい。

【ここではないどこか】


#63

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