世界の終わり
何のために生まれてきたか記憶にとどめ
新たな世界で、穏やかに囲まれる自分の存在を願う
23年前、この世に生を受けた私の子。
曲がりくねった決断をし続け、今東京にいる。
overdoseは若者の文化。
そのずっと前から薬を飲み続け、命をずっと削って、生きる方を選んできた。
誰のため、自分のために?
仕事ばかりしていた。
見守っているという名の放棄。
私に助けてと言った日。娘が生きていることを願って飛行機に乗った。
そしてover dose。
力が入らず、反応がない娘を一晩中、体位交換し続けてた。
発熱していく娘の反応を感じたく、指相撲した。アホな母。
救急車を呼ぶのが正解なのだろうけれど、娘がきっと量を調整しているはず。
目を開けるのを待ち続けた。
まる二日後、立ち上がり「生まれ変わったの」と言った。
生まれ変わった娘に出会った日、私の人生は終わった。
娘と共に最後まで。
好きなことだけして生きようね。
欲しい物、全部買ってあげる。
あなたの父が、してきたことをしようね。
お金がなくなったら終わり。
誰も知られずに消えて行こう。
子どもの時、自分の家は貧乏だと思っていた。
板でできた家。軒下には魚が干してあり、玄関に燕が巣を作っていた。
母は、「燕が巣を作る家には、幸運がやって来るんだよ」と言い喜んでいた。
喜ぶより恥ずかしいと思わない母を理解できずにいた。
板でできた家に住んで、部屋は物で溢れて、冷蔵庫は腐ったものしか入っていない。
この家で生活していることが恥ずかしくて、誰かに自分の家だと分かることをいつも恐れていた。
小学4年生の学校帰り、空を見上げて早く大人になり、この家から離れることを願った。
この時、貧乏ということでは言い尽くせない、家族の病みに気づいてはいなかった。
あの日、私はなぜ死を選ぶことが幸せだと思えなかったんだろう。
なぜ、空は私に未来を選択させたのか、答えが分かる時、未来が終わる時であると今は知っている。