子どもの時、自分の家は貧乏だと思っていた。
板でできた家。軒下には魚が干してあり、玄関に燕が巣を作っていた。
母は、「燕が巣を作る家には、幸運がやって来るんだよ」と言い喜んでいた。
喜ぶより恥ずかしいと思わない母を理解できずにいた。
板でできた家に住んで、部屋は物で溢れて、冷蔵庫は腐ったものしか入っていない。
この家で生活していることが恥ずかしくて、誰かに自分の家だと分かることをいつも恐れていた。
小学4年生の学校帰り、空を見上げて早く大人になり、この家から離れることを願った。
この時、貧乏ということでは言い尽くせない、家族の病みに気づいてはいなかった。
あの日、私はなぜ死を選ぶことが幸せだと思えなかったんだろう。
なぜ、空は私に未来を選択させたのか、答えが分かる時、未来が終わる時であると今は知っている。
5/4/2023, 4:24:32 PM