金雀花

Open App
9/6/2024, 8:20:10 AM

『貝殻』

海の近くで育った
わたしの記憶の始まりの頃
モンペにエプロン、姉さんかぶりをした
小柄なおばあちゃん達が
たくさんのシジミを
小刀を使い身と殻に分けるのを
2つのザルに身と殻が溜まっていく、
その速さに釘付けになり
ずっとしゃがんでみていた。

目の前にじっと座り込んでいたちいさな子は
おばあちゃん達からみたらどうだったんだろう?
作業の邪魔ではなかったか、
大人になったいま思う

と同時に
大人になった私の目に
おばあちゃんと小さな女の子の
姿はとても愛おしく見えるだろう

9/4/2024, 3:47:01 AM

『些細なことでも』

心が弱っているときは
些細な言葉が引っかかる

美容院で
色を決めきれなくて悩んでいると
「時間もないので切りながら考えましょう」
の、
「時間もないので」が引っかかり
施術中ずっともやもや

不快に感じたわけではなく
少し時間が経った今
何故それが引っかかったのか
わからない

けれど、もう行かないかも、とは思っている
数日経っても鏡を見るたび
違和感を覚える

9/3/2024, 9:50:04 AM

『心の灯火』

大切に点けた火は
大切に心の奥に
わたしだけがわかる明るさだけど
何気ない言葉でも
吹き付けられて消えるのが怖いから
わたしの中に灯る火があることは
誰にも悟られないように
不規則に揺らぐ火を
両手でそっと包むように

9/2/2024, 3:12:03 AM

『開けないLINE』

ひらけない/あけない

小さなすれ違いの積み重ねから
縁が切れてしまった友だちがいた

思い切ってLINEを送ったけれど
既読がつかないのを見るのが怖くて
あるいは、付いていてもリアクションがないとしたら
…と怖くて
そのままにしていた

けれどずっと心の底に残る塊が気持ち悪くて
年賀状を出してみた

数ヶ月後届いた返事には
倒れて入院していたこと
倒れたはずみで携帯が壊れ
連絡が取れなかったと

手紙の最後にLINEのIDが書かれていたことに
ここ数年の塊が消えていくようで

けれど、検索しても出てこない
今度はわたしのIDを添えた手紙を書いてみよう

9/1/2024, 2:59:12 AM

『不完全な僕』

わたしの好きな舞台作品のなかに
「Nobody is perfect」という歌がある

その舞台の登場人物たちは
自分の“足りないところ”を自覚していて
抱えているのだけれど
でも完璧な人なんていないことが分かれば
その中でベストを尽くせばいい、こともわかる

というテーマがあって

たまに、実生活でもその歌詞を思い出す
そしてそれを歌っていた役がしていた
「深呼吸して手を2回叩く」
は、
自分の出来なさと
できることに最善を尽くすことを
思い出させてくれる

Next