「虹の架け橋」
ふわ、ふわ、
真っ白に輝く空で、僕は白い羽を動かし飛んでいる。
輝く空は、光は、僕には眩しすぎるんだ。
「天使ってやだなぁ........」
ぽつりと呟いた言葉が心にずっしりと乗っかる。
いつからだろう、この白い羽が嫌になったのは。
仲間たちは自分が清いことを誇りに思っている。
いや、思い過ぎているんだ。だから心の醜さに気づけずに堕ちてしまう。
「......僕は気づいているけどなんで堕ちれないんだろう」
天使から堕ちることを望んでいる、と他の仲間が知ったら失望されるだろう。だからこれは、僕だけの秘密だ。
一度だけ、堕ちた天使を見たことがある。
空の下で羽ばたいていたそれは、羽が真っ黒に染まり目が真紅に光っていた。
「........きれい、」
思わずそう口に出していた。
それに気づいたのか、その堕天使は僕の所に飛んできた。驚いたがその目に捉えられた瞬間、体がなにかに縛られたかのように動かなくなってしまった。
「天使か…お前は堕天使を綺麗だと思うのか?」
「......うん」
「ふっ......変なやつ」
そうやって堕天使は目を細めて笑った。
「秋色」
「あー、おー.......ぃだっ」
叫んでいたら隣に居た友人に叩かれた。解せぬ。
仕返しに足を蹴ってやったらまた叩かれた。ふん、
騒がしい講堂では学生たちが楽しそうに騒いでいる。
「なんであんなに人生楽しそうなんだろ」
「どうせ恋人とかの話だろ」
友人が鼻で息をした。なんだ、こいつもリア充が滅ぶのを望んでいるのか。
それにしても、恋とか愛とかそんなよく分からないものに、なぜそんなに必死になれるのかな。
自分には一生分からないだろう。
「お前には分からないよ」
「.....嘘、声にでてたか」
もうどうでも良くなったので、友人を抱きしめると珍しく頭を撫でてくれた。
「ふっ、恋人なんか作んなよ」
「なんで?」
「お前といる時間減るじゃん、親友はお前しかいないんだから」
「ーーーっ!!!!友よ!!!!!」
「うわっうるさっ」
何か言っていたが聞かなかったことにしてやろう。
今年の秋は、少し楽しめるかもしれない。
「空っぽ」
誰か僕を満たしてよ。
心が乾いて何も感じなくなってしまったんだ。
何かしようとする度に、僕の箱はひび割れていく。
ぴき、ぴき、
ほら、もうこんなに壊れちゃったよ。
誰かに抱きしめられた時。
ひびが塞がっていったんだ。隙間が無くなって、もう寒くないって思えた。
だけど僕は、僕の箱は一度壊れてしまったから。
もう誰も抱きしめてくれなかった。
ぴき、ぴき、
もう、普通の人間には戻れないのかな。