「moonlight」
空に輝く星のように、僕も誰かを照らせる存在になりたかった。
そんなこと無理だって分かってるけど、思わずにはいられなくて。
僕の周りの人はみんなきらきら輝いていて、どうしてそんなに明るいままでいられるんだろうって、不思議に思っていたし、嫉妬だってした。
誰かのために、何かのために頑張れる人。
なんだろうな、きっと。
僕にはそんな人いないし、目標なんてない、つまらない人間なんだ。
いっそその光で僕を消して欲しいよ。
「遠い足音」
鯨が踊っている海で、水飛沫を浴びながら立っている。
聞こえるのは人魚姫の鼻歌。
悲しいかな、水浸しになった自分の頭はもう使えない。
考えることを放棄せざるを得なくなった。
これからどうしようか。
濁った水面に浮かんだゴミのような世界で、
果たして生きる意味はあるのか。
「涙の理由」
なんで僕を置いていったの。
ずっと一緒にいるって言ったじゃんか。
約束、してくれたじゃんか。
今日も僕は、君のいない世界で目覚めたよ。
朝日を見ると辛くて、痛くて、僕を消そうとしてるみたいなんだ。
もう僕を守ってくれる人は居ないから、このまま消えていくんだろうな。
でも、怖いんだ。
この世界から誰にも知られずに消えていくのが。
おかしいよね、自分でも自分のことが分からないんだ。
こんな人間だから、君は離れていったのかな。
また会えたらさ、もう好きになんてならないから。
だから、その手で頭を撫でてほしい。
そして、笑ってほしい。
これが僕の最後のお願い。
「コーヒーが冷めないうちに」
君はいつも、苦いからってコーヒーにたくさんミルクを入れてた。
僕には分からなかったな。なんでそんなに甘いのが好きなのか。
目の前には先ほど入れたコーヒー。
いつもと違うのは、その隣にミルクがあること。
数分考えてミルクを入れる。
黒いコーヒーに円を描くように白が広がる。
手に取るとやっぱりまだ熱くて。一口飲むのを躊躇ってしまう。
口に入れると広がる甘さに顔を顰めた。
それと同時に君の顔が浮かぶから、余計顔に皺が出来る。
ああ、やっぱりミルクなんて入れるんじゃなかった。
「時計の針が重なって」
「はやく!はやく!」
「まってよぉ〜」
君は僕の手を引いて走っていく。
一体何処へ向かっているのか、僕には分からなかった。
君は振り向きもせずにただ走るから、僕は何も言えないまま君について行った。
「はぁ、はぁ、ねぇついたの?..........え」
突然手の温もりが消えたから、目的地についたのかと顔を上げると、そこには誰も居なかった。
周りは草木が生い茂っており、腐った木で作られている大きな家があった。
まるで初めから僕以外いなかったかのような静けさだった。
「.....ねぇ、■■、どこ?」
答えるものはいない。
ひゅぅ、ひゅぅ、と風の音がなっている。
僕は一気に怖くなり、縫い付けられたかのようにその場を動くことが出来なくなった。
かち、かち