「なぁ、今日あんた告白されたってほんま?」
隣の席の子が聞いてきた。
「どこから広がったの…?うん、嬉しいことに告白されたよ」
僕がそう返答すると彼女は口をとがらせた。
「ふーん。嬉しかったんか」
どこかすねた雰囲気に戸惑いながらもうなずきで返す。
「そりゃあ、人として好きですなんて滅多に言われないじゃんか。嬉しいだろ?」
同意を求め隣を向くと机にうずくまった彼女が目に入った。
「…ウソツキ…告白って言ったやんか……」
「うん、人として先輩が好きなので付き合ってくださいって言ってもらえた」
すると彼女は勢いよく頭を上げる。
「はぁっ!?やっぱいわれとるやん!!まさか…オーケーしたんか…?」
勢いはどこに行ったのか少し不安そうに上目遣いで聞いてくる彼女に思わずときめく。
それを悟られないよう横に首を振り、笑いながら答える。
「ううん、好きな子がいるからってお断りさせてもらった」
その言葉を聞くと彼女は力が抜けたように机にまた突っ伏した。
「なんやねん……断ったんか」
「うん、残念?」
ガバっと起き上がる彼女と目が合う。
「残念な訳ないやろ!むしろそれを願っとったわ!だってうちが一番あんたの事好きやもん!」
清々しいほど暴露した彼女に驚きの目を向けると、自覚がないのかキョトンとされる。
「なに間抜け面しとんねん。うちがあんたを好きなこと知ってるんやろ?」
「いやいやいや、初耳なんですけど」
何故か立場が逆転し、いつの間にか僕が振り回されている。
「だって毎日、うち結婚するならあんたみたいな人がええって言うてたやんか」
「たちの悪い冗談かと思ってたよ!?」
「え、じゃあうちは今知らんうちに誤爆したんか…?」
重々しく首を縦に振ると静かに崩れ落ち、小さな手で顔を覆った。
「……むりやわ。ほんまにむり。頼むから忘れたってや」
「え、いやだよ」
羞恥で潤んだ瞳で怒りを向けられたが可愛いとしか思わない。
「君こそ知らなかった?僕は誰よりも君のことが好きなんだよ」
驚きと喜びが広がる彼女にもう一言と言葉を紡ぐ。
「毎日、君からプロポーズしてもらってたから、これからはずっと僕がするね」
きっと自分の顔は今見れるものではないだろうと思いながらも、彼女の小さな手を包み引っ張りながら思った。
きっと誰よりもずっと僕は彼女を愛すだろうと。
その後、二人は家族になり、孫たちに教えました。
『ずっと誰よりも愛せる人に出会えるだろう』と。
#誰よりも、ずっと
「ねぇ、うちらいつまで一緒にいられるかな?」
突然口を開いた彼女の言葉に呆然とした。
「……ずっと俺は君と一緒にいると思ってるけど」
なんとか頭を回転させて答えた言葉に彼女は苦笑する。
なにかしてしまっただろうか?
彼女がこれから口を開く言葉に恐怖を抱いた。
「俺と分かれたいって遠回しに言ってる…?」
おそるおそる聞くと彼女は猫のような目を大きく見開いた。
「そんなわけなくない?うちらめっちゃラブラブだし」
出てきた言葉に首をひねる。
「その自覚があるのになんで、いつまで一緒にいれる…なんて言うの?」
「だって……不安になっちゃったんだもん」
少しすねたように目線を外す彼女に驚く。可愛いという感情を隠しながら口を開く。
「俺は君しか見てないのに?何を不安に思うの?」
彼女は目を丸くさせ頬を緩めた。
「心底不思議そうに聞かないでよ。君はかっこいいからいつもうちは可愛い子に目を光らせてるんだよ?」
初めて知る事実に驚きながらもヤキモチを焼いてる彼女の愛らしさに口が緩んでしまう。
「どんなに可愛いと言われる人がいてもきっと俺は1年後も10年後も君が1番だと思うけど」
彼女が頬を赤く染めた。
「じゃあ君はうちとずっと一緒にいてくれるってことだよね?」
「うん。まだ学生だから確実に予約はできないけど、君以外といる未来が想像できない」
そんな会話を教室でしていた彼らは知らない。
これがクラスメイトにより撮影されており、10年後と結婚式で流されることを。
後に彼らのクラスメイトはこう語った。
「あの二人は学生のくせに熟年夫婦のようなカップルだった」
「なぜ結婚していないのかと不思議に思っていた。」
#これからも ずっと
今日も1日が終わる。日が眠る準備をし始め月が起き上がる時、彼が言った。
「夕日が……夕日が綺麗ですね」
思わず顔を見ればその頬は夕日のせいか、赤く染まっていた。
「そうですね。1日が終わってしまいそうでさみしいです」
そう返すと彼は悲しそうに眉を下げた。
「でも、月も一緒に見るのですよね?」
そう続けると口角を上げ目を輝かせた彼がいた。可愛いという感情が胸に湧き上がる。
わかりずらい人だと、周りくどい、めんどくさい男だと言われることが多い彼だけれど、そんな彼のことを愛している私がいる。
「夕日が沈んでも、今日が終わっても、明日も明後日も一ヶ月後も一年後も僕のそばにいてくれますか!?」
プロポーズまがいなことを言う彼に今日も振り回されてばかりだけれど、平静を保って返す。
「当たり前でしょう?私は貴方が思うよりずっと貴方と一緒にいたいのよ。」
私の言葉に一喜一憂する彼に今日も私は愛の言葉を紡ぐ。
#沈む夕日