ちゃぽん
浴槽の中に
あかく、紅いそれが
まるで金魚のように水の中を泳いで、
その金魚は
泳ぎきらないうちに水に溶けてしまった。
鮮やかに濃く
それは水に馴染んで
一種の芸術であると錯覚してしまいそうだった。
一滴、一滴と腕を伝っては垂れ
金魚が水面を泳いでゆく。
これが私であると、
傷口はまるで心臓のように
どくんどくんと音を立てる。
私の長い髪が水面を這う。
そして私は金魚と一体化する。
ああ、このまま
あかい、紅い金魚と共に液状化できたなら。
あの子を撫でた時、低く、くるくると鳴る振動が
ただ心地よかったのです。
微睡みの中を、独り
生きてゆくのは苦痛だった。
自分が夢の中にいるのか、はたまた現実を生きているのか
もう分からなくなってしまった。
まるで
それは白昼夢のようだった。
視界の端がうすい、白いもやで覆われてしまって
あつい、あつい太陽にじわじわ身を蝕まれている。
汗がダラダラと垂れて
ただでさえ悪い視界が滲んでゆく、
ああ、もう泣けなくなってしまった。
そう思ったら
遠くから
かんかんかんと、踏切の甲高い音がした。
焦るような、そんな感覚が体を包む、
いったいいつからここにいるのか、昔のことのような気もするが
すごく、最近のことのようにも感じる。
もう、じぶんはじぶんではない、、
にゃー
「ひとりにしてくれ」って
俺が言ったのに
なぁ、さびしくてしかたないよ
真っ白い空間が嫌いでした。
まるで私が異物のように見えましたから。
溶けて溶けて溶けて、
ようやく私ができたの。
蛾みたいな羽があって、人間みたいな手がついてて
考える脳みそもある。
でもさ、こんなあたしを誰が好きになるの?
蛾でもあり人間でもある、いや自分は蛾でも人間でもない
どのグループにも入れない仲間はずれなんだって、
気づきたく、なかったなぁ。
せめて、
こんなことを考える脳みそもあの時に溶けてしまえば良かったのに。
あの時まではまだ「普通」だったのに。
あいつらはあたしを見て気持ち悪いって、言うかな。
同じ脳みそがあって、たぶん心もある。
あいつらと同じようにあたしは傷つくから、
きっと、
中途半端にあたしを殺してくれない。
こんな姿、苦痛でしかないのに
冊子に轢き殺されて、、