Seaside cafe with cloudy sky

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10/2/2024, 10:39:37 AM

【時を告げる】← change order【奇跡をもう一度】

◀◀【たそがれ】からの続きです◀◀

⚠⚠ BL警告、BL警告。誤讀危機囘避ノタメ、各〻自己判斷ニテ下記本文すくろーるヲ願フ。以上、警告終ハリ。 ⚠⚠




















時間にして約二十秒ほどの恐ろしい轟音が余韻を残してようやく止まった。ここに居るみなはアランを除いて業務終了の時を告げる大音量サイレンに慣れており、怯んだ者はだれも居らず平然と聞き流して佇んでいた。その中で独りおののき、残響にくらくらする頭を押さえている自分を可笑しく思いながらアランは、ああそうだ!とここまで急いでやって来た目的を思い出した。愉快なご挨拶に気を取られて忘れそうになっていたのだ。エルンストも同じだったようで、「終業だ、もうそんな時間……、そうだ、アラン、」無意識に呟いてはたと気付き顔を向けてきた。達成必須の目的であるエルンストの休暇取得。いまが願い出るちょうど良いタイミングと判断し、ゴーサインを送るようにうなづき返すと、社長、そして専務の二人に向かってエルンストが早速に訴え出た。
「父さ……いや社長、専務、突然で申し訳ないんですが、休暇を取らせて頂きたくてここまでお邪魔しました。明日から六日間の休暇です。お願いできますか?」
六日間。急に申し出るには若干長い期間だ。難しいかもしれない……社長と専務は少々驚いてお互い顔を見合わせたようだったが、二人ともすぐに笑顔で、可愛くてたまらないといった息子、そして甥っ子の申し出を全面的に受け入れる旨を専務が告げた。
「分かった、エル……いや主任、君は本当に今日のこの日まで、チーフと一緒に誰よりも頑張ってくれた。努力は報われなければな。望み通り申請しなさい、チーフがいない今は私と社長とで承認しておくから。休暇中になにかあっても私たちでカバーしておくよ」
「 ―― ありがとうございます、社長、専務!お言葉に甘えてそう致します!」
喜びに紅潮したエルンストが最高役職の二人にハグする。今日はどうやらハグ日和のようだ。もしもの時のための説得助っ人要員として待機していたアランだが、出る幕もなく事がうまく運び、父と叔父の間ではしゃぐエルンストの姿を一安心して眺めていた。
「もう大丈夫ですアラン、これであなたと同行できます!」
そう言ってアランのもとへ帰ってきたエルンストの二の腕を軽く叩いて笑顔で迎えた。社長もあとに続き、
「先ほど息子から聞きました、あなたの旅におともさせて頂けるとか。こちらとしては異存などありませんが、くれぐれもご迷惑にならぬよう言い聞かせておきましたゆえ、どうか息子をよろしくお願いします」
懇ろな礼を述べる社長へアランは軽く首を横に振り、もったいない仰せとばかりに畏まる。
「こんな奇跡のような再会は、きっと人生の粋な贈り物に違いないと思ったんです。それでわがままにも彼を旅の道連れに引きずり込んで、御社の貴重な戦力を僕が独占することになってしまったこと、まことに申し訳なく思っています。彼の休暇のあいだはおそらく大変でしょうが、どうかご寛恕のほど伏してお願いします」
傍で聞いていたエルンストは思わず小声で、大袈裟ですよと赤くなって抗議するも、アランの言葉は社長の胸にジンと響いたらしい。息子と同じく赤みを増した面持ちで大見得を切って見せる。
「そこまで言って下さるとは息子も果報者です。エル不在の六日間、我が社は苦戦を強いられるでしょうが、社員一同粉骨砕身し、なんとか苦境を乗り越えて見せましょうぞ!」
豪語した社長の言葉が興に乗ったようで、弟たちが面白がってざれごとを飛ばした。
「大損失をこうむるのは必定でしょうが、あなたがエルをそれほどまでに見込んで望まれるのならば致し方ありません。ですがジュノーさん、この貸しは高くつけておきますからお忘れなく」と専務がにっこりシビアなジョークを吐く。ギュンターはエルンストの肩を抱き、「大赤字で倒産してしまう前に帰ってきてくれよ、二人とも」とコミカルな口調で嘆いてみせると、みなドッと笑った。

▶▶またどこかのお題へ続く予定です▶▶

10/1/2024, 10:03:34 AM

【たそがれ】

◀◀【通り雨】からの続きです◀◀

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「ということはアラン、あなたと我々ヴィルケ家との縁は、二年前のエルンストとの出会いからすでにはじまっていたわけですな。いや、実に素晴らしい!」
なあエル、と同意を求めながら社長は赤くなって押し黙っている息子のそばへ寄り添い立ち、彼のひよこ頭をワシワシと愛情たっぷりに撫でた。パンクっぽいベリーショートの髪が容赦なくクシャクシャにされるが、エルンストはまんざらでもないようで、そうだね父さん、と相槌を打って先ほどまでのばつの悪い思いを消して父親とのどかに笑い合った。―― 可愛い親子だ ―― 微笑ましい光景に頬を緩ませて見ていると、「じゃ、最後は俺で締めるか」とアランの前にギュンターが握手の手をヌッと差し出してきた。顔を向けると赤毛特有の鮮やかな色、マスカットのような双眸が楽しげに見返していた。
「ギュンター・ヴィルケ、兄二人とは歳の離れた三人兄弟の末っ子だよ。エルとの方が歳が近いんだ。多分あんたとはもっと近いんじゃない?同年代かもな、ってことでよろしく」
なるほど道理で―― エルンストの叔父にしては声や見た目が若いと思った。それに兄弟と言っても、うえの二人はよく似ているのに彼は少し毛色が違っているような……まあ家族事情というものがある、深く穿鑿することはやめて笑顔でアランはギュンターと握手した。
「こちらこそよろしく、ここへ来る前にあなたがデザインされたという事務所を拝見しました。都会風でとても洒落ていますね、自然光を多用されているところや大胆な空間使いが絶妙で心を打たれました。素晴らしいの一言です。素敵な感性をお持ちだ」
なんの虚飾もせず思ったことを素直に告げると、相手も素直な、はち切れんばかりの喜色を満面に、および身体中で表し、歓喜の叫びを短く上げると握手したまま空いている方の手を広げるや、唐突に握っている手をグイと引き寄せてちからいっぱいアランをハグした。
「嬉しいこと言ってくれる!!気に入ったぜアラン!」
そう言って遠慮なくバンバン背を叩かれた。喜怒哀楽の感情表現が激しい、これも赤毛特有の性質か。エルンストとはまた違う情熱的な人物だ。早々に解放されると気付かれぬようにホッとし、笑顔も引き吊ってしまわぬよう気をやって身体を離した。
「ギュンター!我が社の恩人に対してなんたる無礼な!申し訳ないアラン、ガサツで馴れ馴れしい愚弟ですが、決して悪気があってしでかすような奴ではないのです。どうかお許しを」
社長の叱責が飛んで大目玉を食らっても赤毛の末っ子はどこ吹く風で平然と肩をすくめてみせる。ゲーアハルトは済まなそうな笑みでアランに視線で詫び、エルンストは血の気が引いた怖い顔でなんだか金縛りにあっているようだった。まあ愛嬌があって憎めないキャラクターではある、若干ずれてしまった眼鏡の位置を直しながらアランは笑って執り成した。
「社長……いえレオ、僕はもうお身内同然なのでしょう?謝罪なんて水くさいですよ。こんなのは身内同士のじゃれ合いみたいなもの、お気になさらず」
さわやかにそう告げると社長は心の底から安堵して感じ入ったようにうなづき、
「 ―― そう仰せであれば……まことにかたじけない、アラン。 ―― ギュン、ああ言って下さったが、少しはつつしむように!」
アランへ恭しく礼を述べてからギュンターへ向きを変えて厳しく申し渡す。御意、社長!と胸に手を当ておどけて畏まる末弟と長兄との即興コメディーが一段落した途端、いきなりサイレンの轟音があたりをつんざき長々と鳴り響いた。出し抜けなけたたましい音にアランは思わず首をすくめ、終業サイレンかな?と何気なく窓の方を見遣ると、たそがれの最後のひとときを告げる淡い夕焼けの色と、降りてきた宵のとばりの霞んだ藍色が幻想的なグラデーションを空に織り成していた。

▶▶またどこかのお題へ続く予定です▶▶

9/30/2024, 10:13:23 AM

【きっと明日も】

coming soon !

9/29/2024, 10:13:06 AM

【静寂に包まれた部屋】

coming soon !

9/28/2024, 10:14:27 AM

【別れ際に】

coming soon !

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