【時を告げる】← change order【奇跡をもう一度】
◀◀【たそがれ】からの続きです◀◀
⚠⚠ BL警告、BL警告。誤讀危機囘避ノタメ、各〻自己判斷ニテ下記本文すくろーるヲ願フ。以上、警告終ハリ。 ⚠⚠
時間にして約二十秒ほどの恐ろしい轟音が余韻を残してようやく止まった。ここに居るみなはアランを除いて業務終了の時を告げる大音量サイレンに慣れており、怯んだ者はだれも居らず平然と聞き流して佇んでいた。その中で独りおののき、残響にくらくらする頭を押さえている自分を可笑しく思いながらアランは、ああそうだ!とここまで急いでやって来た目的を思い出した。愉快なご挨拶に気を取られて忘れそうになっていたのだ。エルンストも同じだったようで、「終業だ、もうそんな時間……、そうだ、アラン、」無意識に呟いてはたと気付き顔を向けてきた。達成必須の目的であるエルンストの休暇取得。いまが願い出るちょうど良いタイミングと判断し、ゴーサインを送るようにうなづき返すと、社長、そして専務の二人に向かってエルンストが早速に訴え出た。
「父さ……いや社長、専務、突然で申し訳ないんですが、休暇を取らせて頂きたくてここまでお邪魔しました。明日から六日間の休暇です。お願いできますか?」
六日間。急に申し出るには若干長い期間だ。難しいかもしれない……社長と専務は少々驚いてお互い顔を見合わせたようだったが、二人ともすぐに笑顔で、可愛くてたまらないといった息子、そして甥っ子の申し出を全面的に受け入れる旨を専務が告げた。
「分かった、エル……いや主任、君は本当に今日のこの日まで、チーフと一緒に誰よりも頑張ってくれた。努力は報われなければな。望み通り申請しなさい、チーフがいない今は私と社長とで承認しておくから。休暇中になにかあっても私たちでカバーしておくよ」
「 ―― ありがとうございます、社長、専務!お言葉に甘えてそう致します!」
喜びに紅潮したエルンストが最高役職の二人にハグする。今日はどうやらハグ日和のようだ。もしもの時のための説得助っ人要員として待機していたアランだが、出る幕もなく事がうまく運び、父と叔父の間ではしゃぐエルンストの姿を一安心して眺めていた。
「もう大丈夫ですアラン、これであなたと同行できます!」
そう言ってアランのもとへ帰ってきたエルンストの二の腕を軽く叩いて笑顔で迎えた。社長もあとに続き、
「先ほど息子から聞きました、あなたの旅におともさせて頂けるとか。こちらとしては異存などありませんが、くれぐれもご迷惑にならぬよう言い聞かせておきましたゆえ、どうか息子をよろしくお願いします」
懇ろな礼を述べる社長へアランは軽く首を横に振り、もったいない仰せとばかりに畏まる。
「こんな奇跡のような再会は、きっと人生の粋な贈り物に違いないと思ったんです。それでわがままにも彼を旅の道連れに引きずり込んで、御社の貴重な戦力を僕が独占することになってしまったこと、まことに申し訳なく思っています。彼の休暇のあいだはおそらく大変でしょうが、どうかご寛恕のほど伏してお願いします」
傍で聞いていたエルンストは思わず小声で、大袈裟ですよと赤くなって抗議するも、アランの言葉は社長の胸にジンと響いたらしい。息子と同じく赤みを増した面持ちで大見得を切って見せる。
「そこまで言って下さるとは息子も果報者です。エル不在の六日間、我が社は苦戦を強いられるでしょうが、社員一同粉骨砕身し、なんとか苦境を乗り越えて見せましょうぞ!」
豪語した社長の言葉が興に乗ったようで、弟たちが面白がってざれごとを飛ばした。
「大損失をこうむるのは必定でしょうが、あなたがエルをそれほどまでに見込んで望まれるのならば致し方ありません。ですがジュノーさん、この貸しは高くつけておきますからお忘れなく」と専務がにっこりシビアなジョークを吐く。ギュンターはエルンストの肩を抱き、「大赤字で倒産してしまう前に帰ってきてくれよ、二人とも」とコミカルな口調で嘆いてみせると、みなドッと笑った。
▶▶またどこかのお題へ続く予定です▶▶
10/2/2024, 10:39:37 AM