【吹き抜ける風】
やった!休み時間だ!
わたしは真っ先に教室を飛び出し
お気に入りの上階の裏階段・踊り場を目指す
そこには、ほとんど誰も来ない
2時間目と3時間目の間の休み時間は少し長いから
自分を取り戻すために、そこを目指す
澄み切った空気が吹き抜けるこの場所は
わたしのオアシス
風は遠くからいろいろな香りを運んでくる
大きく深呼吸をして、ゆっくりと息を吐いた
頭を空っぽにすべく目を閉じ
ただ呼吸だけを続ける
「キン〜コン〜カン〜コン〜」
予鈴が鳴った
大きくため息をついて、来た道を戻る
(ピュ〜)
教室へ戻ろうとするわたしの背中を押したのは
吹き抜ける風だった
【記憶のランタン】
最近、なんだか調子が悪い
電源は入るが、ちゃんと動かないのだ
ねぇ、しっかり動いてよ
あの時の記憶よ
ほら、アレよ
◯◯といっしょに行ったあの場所
美味しい料理を食べたじゃない
でも、なんて料理だっけ?
あれ?
◯◯じゃなくて△△だったっけ?
えぇ〜、もう何も思い出せないよ
私の記憶のランタンは
完全に故障したみたいだ
【君を照らす月】
わたしは月が好き
三日月よりも満月が好き
なぜ?
だって、満月の方が
照らす光がたくさんあるから
でも一番好きなのは
君を照らす月が一番好き
なぜ?
だって、君のすべてを
見ることができるから
【木漏れ日の跡】
あれはいつのことだったろう
もう随分遠い昔
わたしがあなたを知った最初の春
みんなの中の一人だったわたしが
木々の前に一列に並んだあなたを見つめてた
太陽の陽射しが眩しくて
ちゃんと見ることが出来なくて
わたしはそっと木陰に移動した
木陰にキラキラ光る木漏れ日を浴びながら
遠くのあなたを見て
その姿を目に焼き付けるかのように
なんども瞬きした
そして今
目を閉じれば、いつでもあの日の
木漏れ日の跡を感じることができる
キラキラ光るあの日のあなたを
【ささやかな約束】
誰のためでもない
自分のための
ささやかな約束
「あの時のことは、誰にも告げずにこの世を去る」
ただ、それだけ