赤、青、緑、黄……。
個性豊かな色、それぞれいい所、悪い所があって、でも全てお互いに受け止めて色を混ぜると、また新しい色が生まれる。
そうやって、お互いに認めあって、新しいものを作る。
その中には、黒のように全ての色を飲み込んでしまうような色があるかもしれない。
そうなると、全てを受け止めるのは難しい。
それでも、ちょっとでも受け止められたら、新しい色が生まれる。
黒にだって、新しい色を生み出せる。
あぁほら、周りを見て。
カラフルになってきた。
楽園って、どんなところだと思う?
「何にも縛られてなくて、ものにも、人間関係にも困らない、自由に過ごせる世界……とか」
「いいね。とても理想な世界」
貴方は私の意見を否定することも無く、ただ肯定した。何となく、そんな世界を想像しているように見えた。
「あなたは?」
「えぇ?うーん」
貴方は顎に手をあてて、頭を回転させている。
「自分が生きたいように出来る世界、とか」
「今いるこの世界も、そうじゃない?」
「全員が出来る世界ではないでしょ?みんながみんな、自分の生きたいように生きる。それが成立するような世界」
それが楽園かな、と貴方は言った。
ここが楽園じゃないなら、なんなのだろう。
私は静かに一人で考えた。
風に乗って、どこまでも行くことが出来たらな。
「どこに行きたいの?」
「うぅん、人がいない森」
「どうして?」
「人と関わるのが辛いから」
「へぇ」
貴方は特に深く聞くことも無く、ただ短い返事を私に投げた。
「貴方は、どこにいきたい?」
「うーん、貴方のそばにいられるならどこでも」
「なにそれ。じゃあ、私が風に乗って、遠くへ行ってしまっても、探してくれる?」
「もっちろんよ!」
そういう貴方の笑顔は、とてもまぶしかった。
貴方って、刹那な人だと思う。
「えぇ。初めて言われたかも」
「意外。でも、あまりこういう言葉を知ってる人も、もういないのかな?」
「そんなことはないと思うけどなぁ。どうなんだろう?でも、久しぶりに聞いたかも。刹那な人」
刹那な人、今この瞬間の幸せを大切にする人。私は、そんな貴方が少し羨ましい。
「いい意味で、刹那な人ってこと?」
「うん。私、そういう人に少し憧れてるかも」
「へぇ……でも、私は君みたいな人に憧れてるけどね」
「え、なんで?」
将来のことを考えすぎて、行動に出られない私の、どこを憧れているんだろう?
「私みたいに、今しか考えていなかったら、この先にある幸せを手に入れられないかもしれない。そりゃ、一時的な幸せは持っているけどね。でも、長い目で見ると……って感じじゃない」
「……うん」
「でも、君は違う。先を見据えて、自分が欲しいものを手に入れるために緻密な計画を立てる。そんなの、私には出来ないよ。先に待ってる幸せより、今ある幸せを取っちゃうから」
ま、それぞれメリットデメリットあるよね〜って話!って、貴方は勢いでこの話を終わらせた。
そして貴方は、刹那にして、美しい笑顔を私に向けた。
無意味な事だとわかっても、考えてしまう。
「生きる意味、とか?」
「あー、そうそう。生きがいが無かったり、誰にも必要とされてない気がすると特に」
別に、生きがいがないと生きてはいけないという考えがある訳でもないし、必要とされてない気がするだなんて、ただそう思ってるだけ。
視野を広げれば、自分を必要としてくれる人だって沢山いる。それなのに、視野を広げるのが怖いから。色んな人を見た時、私を批判するような人を見てしまったら。
ただそれが怖いだけ。
「私は、君のこと必要だと思ってるけどね」
「そう?」
「うん。君がいなかったら、今の私なんていないもん」
そう断言する貴方は、どこか小動物みたいな可愛さがあった。
「ほら、これで生きる意味ができた」
「もう、じゃあ貴方の生きる意味はなんなの?」
「そりゃ、君のそばに居るためだよ」
あぁそっか。
求めるだけじゃなくて、与える側になれば。
私の生きる意味が、少しずつ分かってきた一日でした。