夢なんて、大嫌い。
「そう?夢は色んなことが出来るじゃない!」
「その夢じゃない。心が見る方の夢」
「あぁ」
貴方は、理解したようだけど適当に返事をした。
「夢見る心、とっても素敵じゃない。現実ばかり見つめてたら、心が閉ざされちゃう」
「でも、開けっ放しにすると、泥棒が入ってきちゃう」
「そんなやつは、夢の中で木っ端微塵にしちゃえばいいのよ」
「でも、なにか盗まれるかも」
「それなら、その盗まれたもの以上のものを手に入れればいいじゃない」
貴方は、変に楽観的だ。それが出来たら、悩んでいないと言うのに。貴方に相談していないというのに。
「とにかく、夢見る心を大事にしてね。それだけ」
さ、飲も飲も、と貴方は私のグラスにレモンサワーを注いだ。
届かぬ想いの行き先。
「ねぇ、最近飲みすぎじゃない?」
「いいじゃんたまには~。最近趣味やる元気すらないんだよ~」
頭がふわふわする。このまま風船みたいにどっかに飛んでいきたい。
「なんかあったの?」
「いやぁ別に~。仕事は上手くいってるし、人間関係もそこそこだしね~」
「そっか……じゃあ疲れてるだけ?」
「うーん……まぁ多分そうじゃない~」
お酒が回ってるのに、この想いは貴方に言わないようにと、冷静に言葉を選んでる。
それくらい、届いては行けない想いなのだから。
勝手に、届かぬ想いとか言ったけど、
届けられないの、私が臆病だから。
「……ねぇ」
「ん、どうしたの?」
結構飲んでるはずなのに、凛々しい顔つきなのは変わらない。
このまま、酔ってるってことにして、貴方に想いを伝えたら。
「付き合ってくれる?……もう一杯!」
「……はぁ。あと1杯だけね」
呆れたように私を見る貴方は、どこか安心しているようだった。
届かぬ想いは、無理やり酒で流し込んで、そのまま身体中を駆け回るだろう。
「ねぇ、神様っていると思う?」
「えぇ、宗教勧誘はお断りだよ」
今日も疲れを身にまとって、貴方とお酒を飲む。少しずつ酔いが回ってきたからか、貴方も私に変な質問を投げかけてくるようになった。
「そういうのじゃないって〜!」
「分かってるよ。うぅん、神様かぁ。いるんじゃない」
スピリチュアルは結構すきだし、占いとかも興味があったりする。でも、私は適当に、興味無さそうにそう答えた。
「じゃあさ、神様になにか手紙かけるとしたらどういう内容を書く?」
「手紙?そうだなぁ、運命の人は誰ですか、とか?」
「運命の人なら目の前にいるでしょー」
「はいはい、あんたは?」
「私?えーっとねー……す、好きな人の好きな人とか」
神様へ
臆病な私は、自分の思いを伝えられないままでいます。
この世界では、いわゆる普通ではない恋らしくて。
そんな言葉に縛られてる私を、助けてください。
神様、普通ってなんですか。
なぜ普通でなくちゃ、いけないんですか。
「明日、雨降らないかなぁ」
と、雨嫌いな貴方がそっと呟いた。
「なんで?」
「明日体育があるんだよ。はぁ、嫌だなぁ」
体育、そういえば明日は体力テストか。あまり体を動かすのが得意じゃない貴方は、体力テストが迫ると毎回雨を期待する。
私はスマホを取り出して、明日の天気を確認する。
「明日は……快晴みたいだね」
「えー!もう、こういう時に限って……」
貴方はがっくりと首を落とす。そんな貴方を、愛おしいと思ってしまった私がいた。
「まぁ、明日頑張れば終わりなんだからさ。頑張ろ?」
「うぅ、明日頑張れば、かぁ……」
いつもは前向きなのに、体育となるといつもこうなる。明日は、学校が終わったら新作のスイーツでも奢ってあげよう。
せっかく、貴方の大好きな快晴の日なのだから。
「なんで人は、遠くの空へ行きたがるの?」
貴方は、何気ない質問を私に投げかけた。
なぜ遠くの空へ行くのか……新しい出会いを求めて?刺激を求めて?でもなんで?
今の生活が、窮屈だから?人間関係に疲れたから?
「うぅん、縛られてるから、じゃない」
自分の中で自問自答して、ようやく出た答えは、なんだか在り来りのような気がした。
でも、貴方は満足したようで、
「ありがとう」
とだけ呟いて、飲みかけのレモンサワーをちびっと1口飲んだ。
ある平日の昼下がり、貴方は急に私を飲みに行こうと誘った。そんな日の、出来事。
あの日を境に、貴方は遠くへ旅立ってしまった。
私に、何も知らせずに。相談もせずに。
いや、あの質問が、もしかしたら相談だったのかもしれない。
それに気づけなかった私は、きっと、親友失格ね。