また会いましょう
「じゃ、またね」
「うん。また会いに来る」
350km先に向かう新幹線のドアが閉まった。
次に会う約束をして。
約束は前倒しになることもあって。
上手くいっていると思っていた。
1年が過ぎた暖かな春の午後。
通知音がした。
『ごめん』から始まるライン。
嫌な予感がした。
『いつか……また……』
もう、その日は来ないんだなって思った。
スリル
ふたりでスリルを味わうのなら
怖いことは半分に
楽しいことはもっと楽しい
飛べない翼
「いてっ」
背中に走った痛みに思わずその場にうずくまった。
あと少しで飛べたのに。
後ろからザリザリっと足音がして、黒の革靴が視界に入った。
「何すんだよ!」
「まだ早いですよ、飛ぶのは」
見ると男の手には、翼みたいなものがあった。
「は? 何言ってるんだよ、関係ねぇだろ、アンタに」
「ありますよ。担任ですから」
「意味わかんねぇんだけど。背中痛いし、ていうか、何それ?」
「あぁ、これですか。キミの翼です。飛ばないように、もぎましたから――」
背中をさすってきて「痛いですか?」なんて聞いてくる。
「本来、死ぬ時しか見えないんですよ、この翼は……君は」
――あぁ、そういうことか。
「がんばりすぎです。17でこんなに立派な翼にならなくていいんです。立てますか?」
「…………」
「おんぶしますか?」
――はぁ? 何言ってるんだよ、この先生……。
「……先生って、一体……何者?」
揺れる背中で聞いた。
あったかかった。
意味のないこと
「もし、あの時こうしていたら……」と考えること。
鏡の中の自分
洗いたての顔をタオルから離すと、鏡越しに起き抜けの彼と目が合った。
同時に背中から甘やかな衝撃に包まれた。
「おはよう」
「おはよう」
鏡越しに彼と見つめ合う自分の顔は、見たことがない自分で。
――彼しか知らない私。