"巡り会えたら"
彼女が僕の元を離れてから半年が経った。
彼女は逃げるように家を出て行ったきり帰ってこない。
僕が一方的に感情を押し付けたせいで泣いて出て行ってしまった。
半年間、彼女とまた再会すべく、できる限りのことをした。
警察は頼りにならないから自力で情報を集めた。
家の周辺のカメラ、SNSでの目撃情報、
彼女が以前働いていた会社での聞き込み、それらの情報をもとに探すと、秋田県のとある街にいることがわかった。
僕は急いで秋田へ向かった。
街に着くと、パン屋で働いていた彼女を見つけた。
僕が急いで駆け寄ったが、僕の顔を見るなり彼女は顔をこわばらせて後退りした。今にも泣きそうな顔をしていた。
『やっと再会できたのにどうして逃げるんだよ、』
「ま...また私につきまとってストーカーするつもりなの...?」
"形の無いもの"
形の無いもの
実体がない
定まった形がない
でもそれって
どんな形にも変化できるってこと
"ジャングルジム"
小学生一年生の私にとって、ジャングルジムのてっぺんに登ることはとても高い壁だった。
登りたいけど、落ちそうで怖い。
いつもそんな不安を抱えながら挑戦していた。
でも、いつも上まで行けずにいた。
小学六年生になって、もう一度挑戦した。
大きく見えていたジャングルジムは、今は小さく見えた。
足をかけて上まで登った。
その足は前より力強かった。
上まで行けた。
挑戦することはとても大事だと分かった。
もうあの頃の私ではない。
"夜景"
暗い闇の中に街灯や車、家の明かりが浮かび上がる。
赤や黄、白の明かりが眩しいくらいに輝く。
僕はこの景色を君と眺めるのが好きだった。
いつも見慣れた景色だったのに今はとても怖いんだ。
暗闇の中に明かりが一つもなくて、このまま僕も消えてしまうんじゃないかって。
津波が押し寄せてきた時も僕たちはここにいた。
けど君は逃げ遅れた人を助けに降りて行った。
また戻ってきてくれると信じて僕は今日もここで君を待つ。
“終点"(少しホラー)
いつものように終電に乗る。
そして私は◯nstagramのリール動画を見る。
一つの動画が目に入った。
『みつも駅』
その文字を見た瞬間私の意識は途切れた。
気がつくと終電まで来ていた。誰もいない。
外も真っ暗な闇の中。街灯もない。
とりあえず外へ出た。
駅の名前は…
『みつも駅』
さっきの動画と同じ名前だった。
急いで調べてみると、
「呪い」「帰れない」「存在しない」
などと不穏な言葉ばかりがでできた。
その中に一つ、「予知」という言葉があった。
気になったが、焦っていたため特に気にしなかった。
とりあえず向こうに明かりが見え、そっちに向かうことにした。
歩いている途中、後ろから足音が聞こえてきた。
振り向いても誰もいない。
また歩き出すとまた聞こえる。
だんだん足音が速くなり、真後ろまで来たと思ったら、突如背中に鋭い痛みを感じた。
その場に倒れる私を置いて、ナイフを持った者が走って行った。
白い靴を履き、全身が真っ黒だった。
私の意識がまた途切れ、気がつくといつもの電車に乗っていた。
いつも見慣れた街が見える。
夢だったのかと ほっとして顔を上げると、
1人の男性が私と向かい合うように座っていた。
その男性は、頭から足まで黒い服を着て、真っ白な靴を履いていた。