"夜景"
暗い闇の中に街灯や車、家の明かりが浮かび上がる。
赤や黄、白の明かりが眩しいくらいに輝く。
僕はこの景色を君と眺めるのが好きだった。
いつも見慣れた景色だったのに今はとても怖いんだ。
暗闇の中に明かりが一つもなくて、このまま僕も消えてしまうんじゃないかって。
津波が押し寄せてきた時も僕たちはここにいた。
けど君は逃げ遅れた人を助けに降りて行った。
また戻ってきてくれると信じて僕は今日もここで君を待つ。
“終点"(少しホラー)
いつものように終電に乗る。
そして私は◯nstagramのリール動画を見る。
一つの動画が目に入った。
『みつも駅』
その文字を見た瞬間私の意識は途切れた。
気がつくと終電まで来ていた。誰もいない。
外も真っ暗な闇の中。街灯もない。
とりあえず外へ出た。
駅の名前は…
『みつも駅』
さっきの動画と同じ名前だった。
急いで調べてみると、
「呪い」「帰れない」「存在しない」
などと不穏な言葉ばかりがでできた。
その中に一つ、「予知」という言葉があった。
気になったが、焦っていたため特に気にしなかった。
とりあえず向こうに明かりが見え、そっちに向かうことにした。
歩いている途中、後ろから足音が聞こえてきた。
振り向いても誰もいない。
また歩き出すとまた聞こえる。
だんだん足音が速くなり、真後ろまで来たと思ったら、突如背中に鋭い痛みを感じた。
その場に倒れる私を置いて、ナイフを持った者が走って行った。
白い靴を履き、全身が真っ黒だった。
私の意識がまた途切れ、気がつくといつもの電車に乗っていた。
いつも見慣れた街が見える。
夢だったのかと ほっとして顔を上げると、
1人の男性が私と向かい合うように座っていた。
その男性は、頭から足まで黒い服を着て、真っ白な靴を履いていた。
"最初から決まってた"
最初からわかっていたんだ。
俺らがこの試合で負けることなんて、
残り時間7分で3点も点差がある。
最後の大会なのにあっけなく終わるんだな…
そうだ、負けなんて最初から決まっていたんだ。
『お前らはそれで満足なんか?』
キャプテンが口を開いた。
『最初から決まってたんかもしれへんけどな、最後の大会、最高で終わりたいやん、本気でいこうや』
キャプテンに鼓舞され、俺らは一つになった。
こんな最高のキャプテンについて行くことは最初から決まっていたんだ
"鳥かご"
僕は幼い時から両親と3人で暮らしている。
生まれた時は本当の母と暮らしていたが、気づいたら僕は一人、施設にいた。
だからもう、小さい頃の記憶はない。
施設から助けてくれた今の両親にはとても感謝している。
でも、気になる点があるんだ。
この家に来てから、ずっと、僕だけ檻のような場所で暮らしている事だ。
最初は何も思わなかったけど、月日が経つにつれ段々気になるようになった。
ある日聞いちゃったんだ。
『あの子を野生に返そう。』
『そうね、もう立派な雄だもの。』
僕は野生のカモっていう鳥だった。
"友情"
『だって私たち、友達じゃん!』
中学で初めて、親友と呼べるような友達ができた。
その子の口癖がそれだった。
どんな時でも、その子との友情って何よりも優先しないといけない。
そう思っていたのは私だけだった。
私が、両親に頼んで買ってもらった洋服も、
新作のコスメも、限定のキーホルダーも、
その子は、私が持っているものを全て欲しがった。
『だって私たち友達じゃん?』
全部その言葉で奪われていった。
そして、ある時、あいつは私の彼氏を欲しがった。
『ねー、いいじゃん?彼かっこいいもん。
欲しいなぁ〜、ねぇ?友達じゃん?』
そして奪われた。
私の中で何かが壊れた。
あー、もういーや、あんたの家族、友達、生活、
ぜーんぶ奪ってやる。
だって私たち、友達じゃん?