銀時計

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5/7/2024, 3:18:22 PM

『初恋の日』12/258
日付まで覚えてはないけど、それは幼稚園の頃だった。
年中さんのときに同じクラス⸺たしかりんご組だったかな?⸺になって、彼女と知り合ったんだ。
僕と同じくらい身長が低くって、活発そうな肌の色に、つやつやとした黒色のポニーテールがよく似合う、それはそれはかわいい子だった。
今と違ってまだ可愛げがあった僕はなんとか彼女と両思いになれたんだ。アプローチは覚えていないけど。
しかし今でも覚えているのがね、幼稚園のお泊まり会。
みんなでホールに布団を敷いて並んで寝るわけだ。
もちろん隣に布団を敷いたさ。
で、いざお休みという時、彼女、なんて言ったと思う?
「わたし、誰かに手を繋いでもらわないとねれないの」

はあ…
どうして引っ越しちまったのかねえ、僕は。
あの頃の甘い初恋の日々。
この時期になると思い出しちまうね。

5/6/2024, 11:40:11 AM

『明日世界が終わるなら』22/246
ピリリリリ…ピリリリリ…ピリリリリ…ピ。
ジジッ…ガガガ…ブウウーー…ン………

[2038/09/24/23:53:28]
…あ、ごめん、起こしちゃったかな。
ふふ、おはよう。ごめんね、こんな遅くに。
あー…何か特に用があるわけじゃなくて…
って待って待って切らないで!
明日も早いから寝させてくれ、って?
…それは……早く寝ないとね!
でも、その前にちょっとお話したいことがあるの。
聞いてくれる?
…ありがと。ふふ、あなたは本当に優しいね。
…あの……さ。もし、もしだよ。
もし、明日、世界が終わるなら。
あなたは、何がしたい?もし良かったら、聞かせて欲…

[2:24間データ欠損]

…当に、そんな事でいいの?明日で、終わりなんだよ?
まあ…私は別にいいんだけど…さ。
え?なんで急にそんな事を、って?
…ちょっと気になっただけ!
なんにも隠してなんかないってば、もう。
あ、でも、明日の放課後ちょっと時間ちょうだい!
せっかく聞いちゃったし、明日はあなたが言ってたその
[2038/09/24/23:59:59]

ジジジ…ガ…ガリガリガリ…ジー…
………ジジ……………
……………………ガ……………
………………………………………………………………

5/2/2024, 10:44:59 PM

『優しくしないで』15/224
涙が溢れて止まらなくなるのは、
その出来事が悲しかったんじゃなくて、
悔しかったんでもなくて、
あなたの、その眼差しが、やわらかい目が、
あなたの、その言葉が、やさしい声が、
むき出しにされたわたしの心に突き刺さるから。

5/1/2024, 1:44:01 PM

『カラフル』10/209
はじめは、あかいろ、きいろ、ももいろ。
あかるくて、げんきないろ。
おおきいコロコロで、ごうかいに。
でも、段々と、青色、紺色、灰色。
暗くて、静かな色。
細い筆で、繊細に。
そして、これからも。
世界というパレットから取り出された色が、
私の真っ白だったキャンバスを鮮やかに染める。
そうして、長い時を経て、ついに完成するだろう。
色とりどりに描かれた、私の人生が。

4/30/2024, 10:54:47 AM

『楽園』19/199
真っ白なキャンバスに筆を走らせると、
私はいつも、少しの後悔を覚える。
ああ、なぜ私はこれを汚したのだろう、と。
勿論、描き進めていけば次第に色は調和し作品も浮かび上がって来るわけだが。
私がはじめに新品の画布を目にしたとき、確信する。
確かにそこに、楽園は存在するのだ。
木の枠で留められた白い窓から、君にも見えるだろう。

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