〜私だけ〜
悩みというのは厄介だ
自分だけではどうしようもないから
人に相談するけど深刻な悩みほど解決出来ない
それは私だけにしか理解できないからだ
それを伝えようともがけばもがくほど
逆に傷が増えることもある
傷つくことを恐れて話せない人も多いだろう
こういう時私はこれを自分救済の試練と捉えている
解決は私だけが出来ること
世間は意地悪なもので
これでもかと言わんばかりに
押し潰そうとしてくる
悩みを持つということはそれだけ真面目な証拠
世間的に「ダメ人間」というレッテルを
貼られてしまっても所詮世間の目は重要ではない
道徳心があり法を犯すようなことをしてないのなら
批判なんかクソ喰らえ
たった一度の私だけの人生
守れるのも私だけ
世間の悪意に負けないで
〜愛を注いで〜
私の母は今で言う毒親だった
若くして私を身籠った母は
父方の親族から学歴や貧しい家庭の出であることを
なじられながらも
ただひたすら認められたい一心で子育てに励んだ
だが、頑張っても頑張っても続く"悪意"に
母は次第に心を病むようになり
イライラしていることが多くなった
私は母と手を繋いだ記憶がない
買い物に行く時もはぐれまいと
必死で母のスカートを握りしめ走るように歩いた
そんな母も笑顔になることがある
手料理を美味しいと言って完食する時だ
父や妹弟が食べない様子を見て悲しそうに
不機嫌になる母を見たくなくて
私は家族が残した分も完食した
美味しいからいくらでも食べられると言って…
そんなことを続け日々が過ぎていくうち
次第に母は私の容姿をなじるようになった
今思えば素直な気持ちを
ぶつければ良かったと思うが
当時引っ込み思案で気が弱い私は
その場を逃げて部屋で1人泣くしかなかった
父は自分のことで一杯一杯
妹は母を真似る
弟は幼く跡取りとして溺愛
暮らす家に私の居場所はなかった
早く大人になって自立したい
それが小学校低学年の私の夢だった
そんな中でも年に数回行く母方の実家は
唯一心から笑えて安心出来る居場所だった
小学4年生の夏
貯めたお小遣いと夏休みの宿題
数日間着回す衣類を鞄に詰め込み
特急列車に1人飛び乗った
駅に到着して改札を抜け
古びた電話ボックスに向かう
「おばあちゃん元気?」
取り止めのない会話をした後
「じゃあ、また今度会いに行くね」
受話器を置き電話ボックスを出て
祖母の家へ向かう
当時考えたサプライズだ
祖母が喜んでくれるかもしれない…
そんな気持ちを胸に木の匂いがする
ふるさとの道を少し足早に歩く
到着早々勢い良く玄関を開け
「おばあちゃん」と声をかける
驚いた顔はすぐに喜んだ顔に変わり
名前を呼び手を握ってくれた
『ここに居て良いんだ』
素直にそう思えた
こうして毎年の長期休暇の過ごし方は決まった。
祖母の家での過ごし方は簡単に言えば
『押し掛け女房』だ
幼稚園の頃から
掃除、洗濯、料理、アイロンがけなど
女性として嫁いだ時に恥ないようにと
早くから教えられていたおかげで
大好きな人のために出来ることが
たくさんあった
また祖母から教わることは
何よりの楽しみだった
祖母は夕飯前になるといつも居なくなる
近くのお地蔵様にご飯を供えるためだと言うことは
数年後に知った
夕飯の用意を終えて祖母の帰りを待つ間
解放された玄関から山を眺める
夕焼け空が徐々に暗くなる中
蝉の鳴き声の向こうに遮断機の警報音が
小気味よく聴こえる
1人ぼっちで寂しいはずなのに
なぜか温かい気持ちになる
夕焼け色が温かいから?
蝉の鳴き声が一生懸命だから?
頬を撫でる風が優しいから?
考えていると聞き慣れた温かい声が聞こえて
また温かさに包まれる
お互いが愛を持てば
こんなに強い愛なのに…
少しでもいびつになると
途端に脆く壊れやすく
危険を孕むものになる
いびつな愛
真っ直ぐな愛
小さな愛
大きな愛
変わらない愛
新しい愛
義理の愛
様々な愛に包まれ
今日も私は愛を注ぐ
〜空が泣く〜
グラウンドに響き渡る
終わりを告げるサイレンの音
今、友であり同志の君は何を思うか
鳴り止まない歓喜の声
これが自分達に向けられたものなら
どんなに良かったか
見上げた青空が滲み
雫がこぼれ落ちる
苦しかった練習が報われなかったからか
応援してくれた人を笑顔に出来なかったからか
支えてくれた人をガッカリさせてしまったからか
理由は何だっていい
滲んだ世界を目に焼き付け
思いの丈を掻き集める
来年こそはと胸に刻んで
〜貝殻〜
硬く閉ざし身を守る
他人にすれば厄介なこと
自らすれば必要なこと
硬く閉ざした中は安全
でも生きるためには
閉ざしたままではいられない
少し開いて中に入れる
それは思わぬ産物を生み出した
自らの意思で入れた
小さなものは"しん"となり
年月をかけて完成体となる
いびつな形
綺麗な形
光り輝く色
魅力的な色
小さなもの
大きなもの
全ては自らの意思のままに
そうして人を魅了する真珠は生まれる
〜不完全な僕〜
虚ろな目をした君
どこに向かうでも無く
ただひたすら死人のように歩き続ける
手を引いて引き戻そうとしたり
君が危ない道を選ばないように縛ってみたり
思いつくことは全てしてみたけど
どうにもならない君を見て
立ち尽くすしか出来ない僕
不完全であることを嘆き、悲しみ、苦しむ君を
不完全な僕がどうか出来るわけもなく
君の心に響く言葉を探してみるも
知識も経験もさほど無い僕が見つけることなど出来ず
でも、本当は知っていた
君が僕に望むものは何も無いことを
そのまま力尽きていくことを望んでいることを
ごめん
僕は君が居ないことを受け入れたくない
わがままだけど君に生きて欲しいんだ
無責任なことは分かってる
今も君は人生の岐路に立つ
進む方向は
希望の道か
絶望の道か
もし意思を持って歩んでいるのなら
何かしらの言葉や物事が
正しい方向への道しるべになっていることを願う
不完全な僕から不完全な君へ
今でも君のことを思い続ける