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8/31/2023, 5:18:39 PM

〜香水〜

背伸びして初めて買った香水はCK

買ってから使うまで
1年も引き出しの中に閉まっていたのは
使う勇気が持てなかったから

知り合いの家にお呼ばれした帰り道

すっかり辺りは暗くなり
心配だから…と車で送ってもらうことに

車のキーを持って現れたのは
その家のお兄さん

思わぬ人の登場に戸惑いながらも
流れで車に乗り込む

白のランドクルーザーに
シンプルなのにお洒落な服装

車の中は爽やかで少し甘い香りがする

勢いで助手席に乗り込んでしまったけど
ここで良かったのか…

優しい視線に見守られながら
シートベルトを装着しようとするが
慌て過ぎて上手くいかない

不意に甘い香りが近づく

忙しなくこだまする心臓の音

今、自分はどんな顔をしているのか…
恥ずかしくて俯いたまま顔を上げられずにいると

爽やかな香りの後に
頭をポンポンッと叩く優しい手

気持ちを察して
わざと明るく振る舞う彼の優しさが
いやに切なく…

あれから1年

初めての彼氏とのデート

リサーチした服と化粧
爽やかで甘酸っぱい香りを纏う

憧れの大人に少しは近づけたかな

8/29/2023, 4:12:31 PM

〜言葉はいらない、ただ…〜

あなた達のために
手間暇かけて作った料理

なのにさっきから黙々と食べるだけ

ほんと作り甲斐がない

食器の上に残った料理を見ると傷つくわ

パートから帰ってすぐ
献立を考える苦労も
作った料理を自ら処理する虚しさも
分からないでしょうね

           さっきからピリピリしているけど
           何か怒っているのか?

           聞いたら噛みつきそうだし…

           毎日仕事で疲れてるってのに
           誰も労ってくれない
           
           金を稼ぐのは当たり前か?
           
           俺がどれだけ頭を下げ
           嫌なことも耐え忍んで働いてるか
           分からないだろ

       家の手伝いもしてるのに
       ガミガミ小言ばっかり

       学生が気楽みたいに思ってるけど
       すごく疲れるんだから
       ちょっとのことは大目に見てよ

       ママもパパも学生時代を経験してるのに
       どれだけ疲れるか忘れちゃったの?

       どうせ私の気持ちなんて
       分かろうともしてくれないでしょ

  あれれ?
  
  皆んなどうしたの?

  さっきから怖い顔してる

  僕がクルッと一回りすれば
  笑ってくれるかな?
  
  ワンッて鳴いたら
  振り向いてくれるかな?

  あっ、皆んなこっち向いて
  笑顔になった!

  ママの優しい声も
  
  パパの大きくて暖かい手も

  君の楽しげな笑い声も

  大好きだから僕頑張るよ

  僕、みんなが居てくれて
  すごく幸せなんだ

8/24/2023, 6:38:05 PM

〜やるせない気持ち〜

世界は多くのものに囲まれながら
それでも人の気持ちは常に満たされず

安定を求めながら
なぜ現状を良しとしないのか

働く上で多くを求められ
けれどそれほど期待はされず

物を大事にしなさいと言われながら
簡単に人は切り捨てられる

個性を求められるも
「一般的」であることを強要され

堂々とする姿勢に憧れるも
いつも何かしらの視線に怯えている

泣いてるように笑い

笑っているようで怒っていて

怒っているのになぜか悲しそうで

悲しいのに楽しそうに振る舞う

大丈夫

人間みんな、そんなもの


8/24/2023, 3:03:59 AM

〜海へ〜

バルコニーに出ると
磯の香りと波音が聞こえる

太陽が燦々と降り注ぐ
絶好の海日和だ

海岸には多くのサーファーが訪れ
波乗りを楽しんでいる

玄人から素人まで
実に楽しそうだ

バルコニーから部屋へ入っても
大きな一枚ガラスの窓越しに海を眺められる

クーラーの効いた部屋からも景色を楽しむ

スススッと控えめな音を立て襖が開くと
仲居さんが入ってきて
旅の労いの言葉とお茶の準備をしてくれる

「お夕食の時間は…」

その言葉に一気に胸が高鳴る

海の幸を堪能するため
じっくり宿での過ごし方を練る

海の楽しみ方も人それぞれ

8/22/2023, 6:34:38 AM

〜さよならを言う前に〜

駅の改札前

別れ間際に君が見つめるその瞳が

私を離してくれなくて

また君のもとに戻ってしまった

手を繋ぐことも見つめ合うことも

もう何度も繰り返していることなのに

どうしてこんなに胸が高鳴るんだろう

さっきまで普通に交わしてた会話も

今はどこか緊張していて

上手く言葉が出てこない

お互い熱を帯びた瞳で見つめ合う

どうかこのまま

もう少しだけ…

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