ベルの音が鳴る
夕日を跳ね返す塵が
涼しくなってきた部屋で舞っていた。
カーテンが風をはらんで大きく揺れる。
有機物のように揺れるカーテンを
ぼんやり眺めながら
風が止むのを待っていた。
ある瞬間、突然カーテンが重力を取り戻す。
僕はまばたきひとつせずそれを見つめる。
そこには君がいた。
風邪をひくのは久しぶりだ。
ここ1ヶ月は職場にすしずめ状態で、
ろくに休憩も取らなかったからだろう。
だけどその忙しさも一昨日まで。
一昨日に行われた世界中の関係者が集まる会議は、
人種のカーニバルのようで終始賑やかだった。
そして終了後2日かけて後処理も終わらせた。
このままでは立ったまま寝てしまう、
そう思ったときに上司から休暇を勧められたため、
お言葉に甘えて1日休暇をいただいた。
そしてようやく眠れると思い家に帰ってからの記憶が無い。
手を繋いで歩こう
そしたら一緒に歩けるよ!
はなればなれになっても、ずっと友達だよ!
___そういったあの子は、
どこに連れていかれたのだろうか。
ここは立ち並ぶビルの日陰にある孤児院。
無骨な建物の中には家なき子が集められている。
かつて今にも雨が降りそうな日に、
あの子は里親の家に引き取られていった。
その日から一度も会っていない。
いつも笑顔で、
ここに残る私の心配をし、
必ず手紙を送ると約束したけれど。
何年経っても連絡が来ることは無かった。
当たり前だ。
あれから8年が経ち、
ここの職員となった今なら、そう言える。
だってあの子は、
里親のところになんて行っていないし、
そもそもここは普通の孤児院では無かったのだから。
君が死んだ。
抜けるような青と羊雲が眩しい。
遠くまで行けそうな風が、
どこまでも続く草原に吹き付けた。
地面を背中に感じながら、
手を握ったままなのに君はもう返事をしてくれない。
否、もう二度と返事をしてくれないでしょう。
だがそれで良いのです。
すぐに僕も君に追いつくのだから。
実はもう目も開けていられないのです。
だから、
「また会いましょう」
_僕の愛しい人よ