安らかな瞳をこちらに向けるまだ生まれて十何年程度しか経っていない小さなイキモノ。
小さなイキモノばかりを同じ部屋で展示しているここは、有名なショービジネスの勝者の遺伝子から作成されたイキモノを展示販売している。
イキモノたちからこちらが見えないようになっていて、ストレスなく生活している。
物憂げな空に引きずられ、
なにかを忘れている時のなんだかモヤモヤした気分のまま業務終了。
夜ご飯は何か作るか、それとも買って帰ろうか。
そういえば出先で中華を食べたから中華はやめよう。
あの業務は明日やらなきゃいけないな。
などなど。
考え事のせいで道を曲がり忘れ、いつもと違う道を通ってスーパーまで行くことにした。
スーパーまで薄暗い道を歩く。
都心から僅かに離れた住宅街は夜遅くともなれば
人気がない。
チカチカする街灯に照らされながら、去年流行ったホラー映画を思い出した。
切れかけの街灯の奥に、まだライトが着いたお店のようなものが見えた。
その瞬間、どこからともなく非常に美味しそうな出汁の匂いがして、なぜ今まで気づかないかったのか。
早足で近づいていると、
ガラガラと店が開いてバンダナを頭に巻いた、
痩せた青年が出てきた。
Love you
なんて今どき流行らないと思う
SNSが進化し、多様化が染み付いた社会では、
スタンプ一個で代用できる
それでも、
逆光で彼の表情は分からない。
ただ暖かな日差しが差し込む室内と、
対照的だったことを覚えている。
特別な夜になった、気がする。
鈴木華子、29歳。
ブラック企業に務めて7年目。
今日も今日とて終電を逃して、
深夜に2駅分の徒歩帰宅が決定した。
会社は大通りにあり、
ハイヒールをシューズに履き替えて、
華子は歩き出した。
近所には小さな物流センターがあり、
トラックが出入りを繰り返している。
今日も徒歩か。
一昨日も徒歩で帰宅したのに、
ああこれ以上考えるのはいけない。
次はいつ旅行に行こうかな。
去年の春に行ったっきり行けてないなあ。
なんて考えながら、
僅かな街灯が照らす薄暗い道を歩き続けた。
ふと道端に小さい猫のような生き物が見えた。
猫派な華子は久しぶりに見る猫に吸い寄せられるように近づいた。
「可愛い」
「ウニャー」
返事までしてくれた!何を言っても返事ができないうちの上司と代わって欲しいくらいだ。