キンモクセイの香りってトイレの消臭剤のイメージがあるでしょ?海外ではラベンダーの香りがそうらしいよ。帰り道に教えてもらった。不思議な香りだっていつも楽しそうに話してるから、彼女の国にはキンモクセイは無いのだろう。ギンモクセイって言うのもあるんだって教えてあげたいけど、そこまで語学能力が無いのが残念。私はギンモクセイのあの粘土みたいな香りも結構すきだけどな。
そして、ウィズは下を向くのを辞めた。
斜向かいに座った、
人形じみた美貌の魔女を直視する。
真っ赤に燃え盛るようなその双眸を目にしながらも、
まっすぐその目を射抜いた。
さあ、
今までクラスメイト達だったものを背にして、
全員で生き残るための最初の1歩を。
「ねえ、貴女、」
tiny loveってお店知ってる?
最近西口にできたんだって。
宝石の専門店で、
イギリス人の宝石商が
本物の宝石だけを取り扱ってるらしいよ。
宝石商なんて今どき居るんだね。
いつか恋人と行ってみなよ。
いいものが見つかるかもしれないよ。
涼やかな音色が縁側から聞こえてきた。
目が眩むような明るさから逃れ、
暑い季節を体感する。
山の向こうで海のような青とコントラストを描くように、白い大きな綿菓子が浮かんでいた。
僅かな眠気と重力に従って、
背中を畳にくっつけて寝返りを打つ。
そこには深く息を立てる君がいる。
胸の上下がいつもより長くてはっきりしている。
僕も真似をしていつもより大きく息を吸う。
途端にいぐさの匂いが鼻腔をくすぐる。
少しずつ呼吸を緩めると、
身体中が僕の支配下から逃げ出し始める。
指の先が言うことを効かなくなるのを感じながら、
断片的に君のことを考えた。
それでも少しづつ意識は薄れていく。
どんどんまぶたが重くなり、
最後に君の顔がぼやけて消えた。
どうしてこの世界は、こんなにも美しいのだろう。
夜明け前の薄暗く照らされた君の寝顔、
潮の香りを浴びながら船旅を喜ぶ君の笑顔、
映画館でスクリーン照らされて濡れていた君の横顔。
どれも言葉にならないほど美しかった。
別に君が美人だからではない。
君を愛しているから、