M.IZRY−I'm little cat.

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1/20/2025, 10:21:10 PM

明日に向かって歩く、でも
↑タイトル関係なくなっちゃった…かも……

───
何故かわからないけど、異世界という所に来てしまった。
右も左も分からない。
よくある"神様転生"みたいに事前説明なんて無かった。

けれど僕は運が良かった。

僕がいたのは騎士団の巡回ルートだったらしく、僕のことを拾ってくれた。
まあ、当分の間は事情聴取とかで戸籍とかその他諸々で詰められるだろうな……

一体どうして僕はこんな所に来てしまったのだろうか。

トラックに轢かれたとか、飛び降りたとか、踏切を渡ったわけでもない。
歩きスマホして電柱にぶつかって、前を見たら木が。え?

慌ててマップアプリを開いたけれど真っ白。

更には見たことない ─鹿のような角を持った猪のような─動物がこちらを"つぶらなひとみ"で見ていた。
……撫でようとしたら角ではたかれたが。

「……さて 現実逃避はそこまでにしましょうか?」

「貴方には "亡命罪" の容疑がかけられています。」

身に覚えのない、聞いたことのない罪状に問われている。
僕を見る厳つい騎士団長さん ─ケモミミは無かったけど尻尾が付いてる!しかもモフモフ─ の目はかなりきつい。

亡命って、国から逃げることでしたよね……たしか。
なぜこんなにも重罪を犯したかのような雰囲気で、あたかも僕が大罪人であるかのような視線を向けられているのだろうか。

「つきましては 暫くの間この"中間塔"に滞在してもらいます。司教代理様がお着きになり次第 貴方への審問が開始されます。」

"司教" "代理" "様" !!!
なんだかとても偉そうな肩書の方が来られるそうだ。

それにしても"司教"とは。
こう言うのって弁護士的な法律の人が来るものでは無いのか……?

それに取り調べじゃなくて"審問"……
いちいち言い方が凄く怖い。

その人が早く来て欲しいとも思うけど、来ないで欲しいとも思う。

「非常事態なので恐らくは4日後の昼あたりにお着きになるでしょう。心の準備を お願いします。」

それにしても

「それでは着いてきてください 貴方の部屋まで案内いたします。」

この人

「さあ お手を」

さっきから尻尾が千切れんばかりに揺れている。

12/4/2024, 12:31:58 PM

夢と現実


ある日、世界がひっくり返った。
地面は空に、空は地面に。
水は宙に浮き植物は逆さまに生える。
それでも、自分の足は大地に着いたまま。
目の前には大ぶりな杖を持った小さい少女。
少女が何か呟いた。

────目が、醒めた。

周りは水に囲まれている。
目の前には大きな獣。
その爪はヒビ割れている。
その赤い眼光は今にもこちらを射殺しそうだった。

11/30/2024, 11:13:53 AM

泣かないで


轟々と燃え盛る黒い炎。
熱くはない、冷えていく。
吐いた息が白く変わり溶けていく。
炎の中にポツリと立っている。
黒く煤けたタキシードがじわじわと朱に染まる。
同じように煤けた顔に黒い涙がさらに顔を汚していく。
涙を拭おうともしない。
唯一汚れていない手で一対の指輪を撫でている。
一つを二つに、二つは三つに。

消えることのない罪の炎。
けれど決して悪い事だけでは無かったと。
足元に蹲る二つの亡骸と、一匹の青い猫。
自分一人がその罪を背負えば、愛する彼らを護れる。

ふわりと、薄紫の風が炎を縮めた。
淡い青色が黒い涙を拭い、去った。
白い光が凍える寒さを取り、去った。
黒い涙に隠された赤い目が驚きと光に満ちた。
嘗ての二人が見えた気がした。

透明な涙が煤けた顔に道を創った。
一瞬、ペルシャ猫が足元で一つ鳴いた。


「やっぱり、笑顔が似合うね。」

11/27/2024, 10:46:03 AM

愛情


それは、意志あるものの象徴ではないだろうか。
それは、考える者の特権ではないだろうか。
ただ無作為に他を愛することなど到底できまい。
人間は特に。
縁、運命、番、さまざまな愛の象徴の言葉が出来た。
感情という一つの大きな括りが出来た。

愛が理解できないと言うのならば、"行きつけの店"を作ってみると良いよ。
なんでも良いし、どこでも良い。
それか、"暇な時にふと読む本"でも"手持ち無沙汰な時につい回すペン"。あとは……"暇さえあれば鏡で見てしまう自分"?

──まあでも、愛着なんて言葉もあるし、自己愛だと言う言葉もある。
人は、つい何かしらを愛してしまうらしいからね。

11/26/2024, 10:17:53 AM

微熱


いつからだったか、目で追いかけてしまうようになった。
可憐で、美しい。天使のような彼に、恋をした。

朝、何気なく挨拶をかけられる程度の関係。
ただのクラスメイト。
授業中にスマホを出して、トークアプリを開いているのを知っている。目元が、やんわりと弧を描いたのを知っている。体育のときはたまにズル休みすることを知っている。

それでも、彼の好きな食べ物も、趣味も、好きな人も、何も知らない。
柔らかな声が一層柔らかになる瞬間を、私は知らない。

けど、けれども、だとしても。
気持ちだけが、どんどんと募っていく。
寝たふりをして、放課後の彼の談笑に耳を傾ける。
ずっと聞いていたい。

それでも、これは、この恋は、許されない。

微かな熱を孕んだ彼の声がスマホ越しに誰かに伝わった。

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